ユージニア

ユージニア (角川文庫)

ユージニア (角川文庫)

あの夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。旧家で起きた、大量毒殺事件。未解決となったあの事件、真相はいったいどこにあったのだろうか。数々の証言で浮かび上がる、犯人の像は--。

http://www.amazon.jp/dp/404371002X

うーん...。なんとも不思議な作品。
ひとつの事件を複数人の視点から見るという手法は小説だとあまり記憶にありませんが映画であればいくつか覚えています。最近だと「バンテージ・ポイント」がこんな構成だったことが記憶に新しいのですが、これを小説でやってのけたのがこの作品だといえます。
事件を多角的に見ることで徐々に事件の本質が浮き上がってくるところがこの構成の良さなのですが、実際に映像抜きの文字だけでこれをやろうとすると何だかもどかしさばかりが先にたってしまう印象を受けました。中盤付近で登場人物がかなり出揃ってきたところはかなり惹きつけられたのですが、後半の事件の全容が見えてくるはずの部分がいまいち飲み込めずモヤモヤとした気分のまま読み終えてしまいました。何度か繰り返し読んだのですが、正直いまだにすべてを理解した気分にはなれずとても消化不良です。
いったいどこが分かりにくかったのか振り返ってみると、誰が話しているのかという点がわざとあいまいに書かれている箇所が多いところではないかと感じました。章が変わると発言者も変わってしまう点も分かりにくさを感じました。文章を読み進めていくと徐々に話し手の姿が見えてくるのはすごくおもしろいのですが、そのおもしろさ以外にも意図的に分かりにくさを演出されているようなそんな印象も受けましたが、


それでも、この作品全体に漂う恩田作品特有の香りには参ってしまいます。もう書いた人が誰かなんてわざわざ聞かなくてもすぐそれと分かってしまうほどの匂いがこの作品から感じられました。
そしてわたしはこの匂いが好きなんだよなあ。
恩田さんにはメロメロの今井メロです。