やわらかい手


ロンドン郊外の町で、至って平凡な人生を歩んできた主婦、マギー(マリアンヌ・フェイスフル)。最愛の孫の手術費用を何とか工面するために、彼女はちょっと変わったセックスショップでの接客業を始める。そのサービスとは、壁に開いた丸い穴から手を動かし、壁の向こうの男性を絶頂に導くこと。やむなくこの仕事を始めたマギーだったが、その隠れた才能で、瞬く間に長蛇の列が出来る売れっ子となっていく…。人生には思わぬ逆転のチャンスがあることを教えてくれる人間賛歌の物語。

『やわらかい手』作品情報 | cinemacafe.net

新文芸坐にて。
孫の手術費用を稼ぐために手淫で稼ぐことになったおばあちゃんの物語。生きることの難儀さとすばらしさ。対角にあるこの2つの要素がふんだんに盛り込まれた、生きることに前向きになれる魅力ある作品でした。


当初嫌々仕事をこなしていたマギーが、仕事に慣れるにしたがって、目的が徐々に「お金を稼ぐこと」から「仕事すること自体」へとシフトしていくのがとてもおもしろいなと感じました。
仕事をすることでやっと見つけた自分が必要とされている大事な居場所。
たとえその仕事が人には言えないようなものであったとしても、そこにいたいと思う気持ちはすごく理解できます。


マギーはそれまでの人生で自分の居場所というものを明確に見つけたことはなかったのではないかと思います。惰性や他者が主導で選んだその場所は決してマギーにとって心地よい空間ではなく、けれどそのことにマギー自身疑問をもっていなかったのです。
それが感じられるのは、冒頭で見せるマギーのどこか自信の無さそうな立ち振る舞いであり、また、周囲のマギーへ対する態度なのですが、だからこそマギーは自分の居場所に対してつよい執着を見せたのだろうと思うわけです。そのマギーの心境を想うと、とてもぐっときてしまいました。


孫が病気だったり、お金がなかったりと、ストーリーの主軸は悲しいはずなのにでも笑いが絶えない構成もとてもおもしろいと感じました。とてもよかったです。


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