「一勝九敗」読んだよ

一勝九敗 (新潮文庫)

一勝九敗 (新潮文庫)

豪胆な父とは対照的に内気な息子・柳井正は、大学卒業後、家業の紳士服店を継いだ。やがて店をカジュアルウエアのトップ企業「ユニクロ」へと急成長させるまでには、数々の失敗の歴史があった。株式上場、急成長、業績低迷の実態に率直に触れつつ、高品質の衣料を低価格で売る秘訣、広告代理店任せにしない宣伝戦略、透明性の高い人事など、独自の経営哲学を惜しみなく公開する。

http://www.amazon.co.jp/dp/4101284512

大学生の頃は服飾に強いこだわりを持っていた時期だったので、お店に行ったこともないくせに「かっこ悪くいユニクロの服なんて着るわけないじゃん」みたいなことをよく言っていました。今思い返すと、ユニクロに行って商品を見た事もなかったくせに超偉そうな勘違い発言を口にしていたわけでして、そんな自分が恥ずかしくてしょうがありません。
そんなわたしも働き出してからユニクロに行く機会があったのでどういうものなのかと友だちについて行ったところ、店舗内の空間があまりに居心地がよくて驚いたことを思い出します。
当時、わたしが服を買いに行っていたお店は店員さんからあれやこれや新作を説明してもらったり、その上で気に入ったものがあれば試着してみて...なんてことをしていたのですが、たしかにいろいろと教えてもらえるのはうれしい反面、服を買うのにかなりの労力を必要とするわけです。おしゃれでかっこいい/きれいな店員さんと長い時間おしゃべりをするのって、楽しいこともあるけれどでもコミュニケーションを取るのが基本的に苦手なわたしにとっては結構な重労働だったんですよねえ。服を買いに出かけた日はもう疲れ果ててぐったりしてしまうことが少なくなかったのです。
それに比べてユニクロでは店員さんからのアプローチというか接客されることが全然ないので、欲しい服のサイズがないとか裾上げするときと会計をするときくらいしか話す必要がないのです。ゆっくりと自分のペースで買うものが見られるのがとても楽しくて、こういう服の買い方って楽でいいなと感じたことをよく覚えています。


そんなわけで、時代に5年くらい遅れてわたしの中に魅力あるお店としてインプットされたユニクロですが、そんなユニクロの創業者である柳井さんがご自身について書かれた本が文庫になったということで手にとって見ました。


本書の中でもっとも共感を覚えたのは、「毎日でも変えたい組織図」と言うトピックです(164ページ)。
このトピックのタイトルどおり、著者は組織は外的な変化に応じて毎日でも変えたいという主張しているわけですが、そうしたい半面、組織と言うのは一度作ってしまうとその形を維持することが必要だと錯覚してしまう人が多くいるということも書かれていました。そういえば、これと同じような話を「「文系・大卒・30歳以上」がクビになる」という本で読んだばかりでしたのでそのことを思い出しながらあれこれ考えをめぐらせてしまいました。
自分の居場所を作るために仕事を作ったりその仕事を維持するために組織まで作ったりする人がいるというのは、実体験と結びつく事実はないものの、現状維持や自身の立場を安定したものとしたいと望む層が一定数存在するという客観的な事実とよく一致します。わたしも保守的な人間なのでそのように自分の位置を確保したい願う気持ちはよくわかるのですが、一方では特定な人だけと結びつきがちな硬直した組織がいいものだとは微塵も思っていませんし、そもそも無駄が多い組織の中で安定した居場所を確保したとしてそれで安心出来ないだろう...と思うわけです。だから、常に外部の変化に対応できるようにしておくことの方がより安定した立ち位置を築けるんじゃないかとわたしも思うし、流動的であることの方がメリットが大きいということに心底同意するのです。
しがない一般社員であるわたしには経営層の考えることはあまり理解出来ないことが多いのですが、会社を取り巻く外的な環境変化へうまく対応するために、社内をより流動的に変更できるようにしておきたいという経営者の気持ちが珍しく理解できたためにとても印象に残ったのでした。


これ以外にもおもしろいトピックがたくさんあって、何度も読み直したくなる一冊でした。


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