犬と私の10の約束


北海道・函館で暮らす14歳の少女、あかりの家に一匹の子犬がやって来た。前足の片方だけが靴下を履いたように白いそのゴールデンレトリーバーに、あかりは“ソックス”と名づける。犬を飼うことに喜びを見せるあかりに、母は犬と“10の約束”をしなければならないと教える。その約束を交わした瞬間から、あかりとソックスはともに大人への成長を始める。そしてやがて訪れる悲しみや困難、どんな時にもソックスはあかりのそばにいて励ましてくれた…。

『犬と私の10の約束』作品情報 | cinemacafe.net

宇都宮ヒカリ座にて。
ひとりの少女が一匹の犬と過ごした長いようで短い10年という月日。
動物と一緒に過ごすことのいい面、悪い面がとてもバランスよく描かれていてそんな生活を疑似体験できる作品でした。


私はこの作品を観ながら、自分の幼い頃の事を思い出してしまいました。


私の実家は、市内では大きな方に分類される本屋の裏手にあります。大きいとは言っても専門書などほとんどなくて蔵書がすごく多いわけでもないのですが、それでも雑誌やベストセラーの本などは不足なく置いてあり、それ以外にも文房具や雑貨も売っていたために子どもにも人気があり、平日/週末問わずいつも多くの人でにぎわっている本屋でした。
生まれついての田舎者の私は、家の近くが賑やかなのはとてもよいことだと諸手を上げて喜んでいましたが、本屋に来る人の増加に比例してなぜかあるモノが増えだし、私や近所の人たちを困らせるようになりました。


その増えたものがなにかというと捨て犬なのです。本屋の裏側に犬(特に子犬)を捨てる人がすごく多くて多い時は毎週末ごとに犬が増えていきました。おかげでうちの近所はあっという間に野良犬王国になってしまいました*1
たまに捨てられる程度の時は、近所で手分けして飼い主を探したり自分のところで飼ったりしていたのですが、今思うとその受け入れ態勢の良さが逆に捨て犬増加の一つの要因だったような気がします。見張りを立てるとか捨てられない努力をすればよかったのに、どんどん受け入れてしまうものですから、気付けば犬を捨てる聖地みたいになってしまい爆発的に増えてしまったのです。


その大量の捨て犬の中で、一匹だけうちで飼う事になった犬がいました。その犬の名前は平凡な名前だったと記憶していますが、名前そのものが全く思い出せません。ただ、薄汚れた白い雑種の犬だったのはすごく記憶しています。
ひとまずここではポチと呼ぶことにしますが、このポチは雑種であり見た目もそれほどかわいいとは言えなかったのですが非常に賢い犬でした。一切の脚色無しに当時小学生だった私よりも賢かったのです。


よくテレビや雑誌などに出ている、飼い犬よりも賢くなさそうな飼い主が「うちの○○ちゃんはすごく賢いんだよ☆ミ」と寝言を抜かしていますが、正直あの程度の賢さなどポチの賢さに比べたら桁違いすぎて比べる気すら起きません。


どのくらい賢いのか、記憶にある限り並べて見ました。

    1. 文字が読める
    2. 空気も読める
    3. 手先が器用


いや、正直こんなもんじゃなかったのですがもう20年近く前の事なのですべてが記憶のかなたです。
でも本当にすごいんです。捨ててある新聞を読みふけって考え事をしていたり、俺や弟が落ち込んでいると慰めの言葉をかけてくれたり、あげくの果てには自分で首輪をはずして外出したりしてました。
文字にするとうそっぽくて悲しいのですが全部実話。週間実話です。
もう僕の中では伝説としかいいようがないのですが、本当にすごい犬でした。今思い返してみると、あれは犬の姿をした人間だったんじゃないかと思うくらいです。


そんなポチはある日突然居なくなりました。朝起きたら首輪がきれいに外されてたので「またどっかに外出したのか」と思っていましたが、それ以来帰ってくることはありませんでした。
ウロウロしているところを保健所の人に捕まったのかとも考えましたが、あれだけ賢いポチが人間ごときに捕まるとも思えませんので、きっと彼の考えでどこかに旅立ったのだと思います。家族が失踪してしまったようであの時は本当に辛かったです。


その時に学んだのは、人間であろうと犬であろうと一緒にいられる時間には限りがあるという事です。
いつまでも一緒に居られると思ったポチが、あっさりと目の前から姿を消した事で家族だっていつまでも一緒にはいられないんだなと強く感じ、そしてとても悲しい気持ちになりました。


余談のつもりがちょっと本気で書いてしまいました...。
話を映画に戻して、この作品を観ていて私は20年以上前のポチとの思い出を思い出し、そして久しぶりに動物と過ごす生活への憧れの気持ちを思い出しました。毎日散歩しないといけないし、しつけなど大変な事も多いけど、それでも無垢な動物に日々触れることで得られるものは大きいように感じます。


この作品を観て、家を買って犬も飼おうかなと本気で考え始めました。大きな家と大きな犬が欲しいです。


公式サイトはこちら


[追記]

ちなみにこの作品のタイトルになっている10の約束とは以下の十戒のことだそうです。

    1. 私と気長につきあってください。
    2. 私を信じてください。それだけで私は幸せです。
    3. 私にも心があることを忘れないでください。
    4. 言うことを聞かないときは、理由があります。
    5. 私にたくさん話しかけてください。人の言葉は話せないけど、わかっています。
    6. 私をたたかないで。本気になったら私のほうが強いことを忘れないでください。
    7. 私が年を取っても、仲良くしてください。
    8. あなたには学校もあるし友達もいます。でも、私にはあなたしかいません。
    9. 私は10年くらいしか生きられません。だから、できるだけ私と一緒にいてください。
    10. 私が死ぬとき、お願いです、そばにいてください。どうか覚えていてください、私がずっとあなたを愛していたことを。


[追記2]
そういえばこの作品には、あかりの同級生役で池脇千鶴さんが出ていました。
相変わらずかわいくてホレボレしてしまいます。

*1:ちなみに余談ですがうちの近くには猫屋敷と呼ばれている猫が10匹以上住み着いている家が2件もありました。当時は全然普通のことだと思ってたけど今思うとこんなに犬やら猫がいる環境って異常ですよね...。