青空のルーレット


自分たちの夢を実現させるために、高層ビルの窓拭きで生計を立てる若者たち5人。それぞれ違う夢を追いかける中で、タツオ(塩谷瞬)と勇介(忍成修吾)の 2人はミュージシャンになるため、仕事帰りに演奏のバイトをしては、音楽事務所に自作のデモテープを売り込んでいた。そんなある日、公園で演奏の練習をしていた時、タツオはひとりの女性と出会う。彼女の名前は加奈子(貫地谷しほり)。耳の聞こえない彼女はタツオたちの音楽を肌で感じて涙を流していたのだ。その日からタツオと加奈子のほのかな交流が始まり、やがてオーディションの誘いがやってくるが、夢が叶うと思われたその日、ある事件が起きた…。

『青空のルーレット』作品情報 | cinemacafe.net

宇都宮ヒカリ座にて。
高層ビルの窓拭きをしながらそれぞれの夢を追いかける人たちの日常を綴った物語。
特別な日々ばかりではなく、普通に働いている毎日といったささやかな日常を自然に描いており、その日常感がとても心地よく感じられてよかったです。


作品の雰囲気以外でこの作品に惹かれた理由は、貫地谷さんの表情ひとつひとつがとても魅力的だったことです。
「神童」や「包帯クラブ」などで観た時には全く気にならなかったのですが、今回聴力に難のある役柄だったためにセリフが一切なく、そのために表情主体のコミュニケーションになったことで初めて彼女の表情の豊かさに気付きました。
特に公園でタツオたちが歌う様子を見て喜ぶ表情には思わずぐっときました。表情だけでここまで興奮させられたのは本当に久しぶりです。
冗談抜きで、このシーンだけでも観る価値十分だと断言出来ます。


さて。
貫地谷さんの魅力はここまでにしておくとして、ストーリーが結構面白かったのでそちらの感想も書こうと思います。


この作品では、多くの登場人物は高層ビルの窓拭きという仕事に従事しています。命綱を頼りに高層ビルにぶら下がって窓を拭くという、正に命懸けで仕事をしているわけです。


この辛い仕事を続ける理由はただ一つ。「夢をかなえるため」なのです。


ある人は夢を叶えるのに必要な時間を作るために短時間でお金を稼ぐ必要があったり、ある人は好きな人に一人前だと認めてもらうためだったりと、目的は様々ですが、この仕事を一つのステップとして夢をかなえようとしています。


そんな窓拭き仲間の中で、最年長でかつ誰からも慕われているのが小説書きの萩原さん。
若いメンバーが失敗をしたら自らその泥を被り、他のメンバーが困っていたら助けてくれるという頼れる先輩として皆の尊敬を一身に集めているのです。
一方。
この窓拭き会社には専務がいます。これが非常に小さな人間でして、小さなミスでも発覚しようものなら何ヶ月も前の失敗まで蒸し返してきて嫌味をいう奴なのです。さらに専務は夢を追いかけてる奴が大嫌い。事あるごとに「仕事もろくに出来ないくせに」とか「夢を追いかけてばかりいるとダメ人間になる」と言っては、社員の夢をぶち壊そうとしているわけです。


そんな対照的な二人に訪れる因果応報な結末がこの作品の一つの見どころだと思います。


そもそも論で言うと、私は因果応報という考えが苦手です。ですのでこのような皆に優しい人が救われて、逆に嫌われていた人が憂き目にあうという展開を観て、そこまでの平凡な日常感が急に薄れてしまい、急に舞台を見ているような人造的なものを観ている感覚に襲われました。
そこで一気に興醒めしそうになったのですが、そこでふと思ったのです。自分は萩原さんと専務どちらのような人間になりたいのだろうかと。


自らを省みずに仲間を助けようとする萩原さんと、周りは全部蹴落としても自分は助かりたい専務。


以前、私は「だれにでも「いい顔」をしてしまう人」という本を読んでこのようなエントリを書きました。

ただし、だからといって相手から何か頼まれたら絶対に断るのか、と言えば決してそういうわけではありません。やはり仕事とは他人の役に立つ事をするから成り立つわけで、自らが力になりたい・役立ちたいと思う人には今まで以上に尽力し、仕事を押し付けてしまえという輩の仕事は徹底して排除するというこの二段構えで実践しようと思います。

2008-02-24 - 子持ちししゃもといっしょ

自分の中には誰かの役に立ちたいという欲求が少なからず渦巻いています。その想いを具体的な形にするとすれば、私は萩原さんを目指すしかありません。


そんな「萩原さんになりたい」なんてことを真面目に考えていたらあっという間にラストシーンまで終わってしまいました。


だんだん何を書きたかったのかよく分からなくなってきたのでそろそろ止めます。


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