フラガール

http://www.hula-girl.jp/

先週金曜日にフラガール見てきました。全作品1000円の日だったためか、とにかく人が多かった。。。平日の真昼間なのになんでこんなに人がいんの?と思わずにはいられませんでしたが、よくよく考えてみればそれはお互い様ですね。俺も見に行ってんだから同じ仲間です。



http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=6184から抜粋。

昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。”求む、ハワイアンダンサー”の貼り紙を見せながらここから抜け出す最初で最後のチャンスだと、早苗(徳永えり)は紀美子(蒼井優)を誘う。男たちは、数世紀前から炭坑夫として、女達も選炭婦として、働いてきた。だが今や石炭から石油へとエネルギー革命が押し寄せ、閉山が相次いでいる。この危機を救う為に炭坑会社が構想したのが、レジャー施設「常磐ハワイアンセンター」だった。
紀美子の母・千代(富司純子)も兄・洋二郎(豊川悦司)も炭鉱で働いている。父は落盤事故で亡くなった。母は「百年も続いたウジの炭鉱は天皇陛下までご視察にいらしたヤマだぞ」と自慢し、炭鉱を閉じて”ハワイ”を作る話に大反対。それでも紀美子と早苗はフラダンサーの説明会に出かける。ほかの娘たちは、初めて見るフラダンスの映像に「ケツ振れねえ」「ヘソ丸見えでねえか」と逃げ出してしまう。残ったのは、紀美子と早苗、それに会社の庶務係で子持ちの初子 (池津祥子)だけだった。そこに、ひときわ大柄な女の子、小百合(山崎静代南海キャンディーズしずちゃん)が父親に連れられてくる。
娘達にフラダンスを仕込むために、ハワイアンセンターの吉本部長(岸部一徳)は東京から平山まどか先生(松雪泰子)を招く。本場ハワイでフラダンスを習い、SKD(松竹歌劇団)で踊っていたダンサーだ。最初は田舎町を軽蔑し、ど素人の娘たちに踊りを教える意欲もないまどか先生だったが、紀美子たちの熱心さに次第に真剣になっていくのだった・・。


内容は大雑把に分類するとスウィングガールやダンドリウォーターボーイズ系の作品です。全くの未経験者が一丸となって何かに取り組み、最後にババンと成果を披露するっていう話です。メンバーも豪華だし、実話を元にしているだけあってリアリティもあってとても面白かったです。


親友の早苗(徳永えり)に誘われてなんとなくフラダンスを始める事になった紀美子(蒼井優)。親からは勘当され、先生(松雪泰子)からはそんなんじゃ一生かかっても出来ないと烙印を押され、さらには周囲の人たちにはダンスなんかしやがってと敵視され、それでもダンスが出来るようになりたいと願い懸命に努力する姿がもう何と言うか健気で応援したくなります。
小百合(しずちゃん)も不器用でうまく出来ないながらも、父親が勧めてくれたダンスを一生懸命覚えようとしているその姿は胸がつまされます。
さらに、最初は「こんな田舎、さっさ仕事を終わらせて帰りたい」と思っていたまどか先生も、気付けばメンバーの頑張りに親身になって教え込むようになっていくのですが、その馴染んでいくプロセスがすごいいいんですよね。松雪さんのキャラ作りが本当に上手いんです。東京から来た人が田舎に馴染んでいくプロセスが見事に演じられています。
そしてまどか先生が生徒達を愛しくてたまらない!! というそんな気持ちがストレートに伝わってくるシーンが、後半になればなるほど増えてきます。
早苗が父親に殴られて髪を切られた時には銭湯へ殴りこんで父親をぶっ飛ばしたり、早苗の別れのシーンにはかけていたサングラスを渡してあげたり、うまく踊れて嬉しい時には一緒に喜び、誰かに悲しい事があったときには一緒に泣ける。松雪さんが演じたまどか先生からはそんなまどか先生像がちゃんと伝わってきました。


で、話はストーリーに戻って...。
結局この作品の話題の中心は価値観の対立です。100年続いた炭鉱文化を捨てきれずにいる旧価値観グループとこれからどうすべきかを真っ向から見据えて行動している新価値観グループ。
旧価値観を持っている紀美子の母・千代(富司純子)が紀美子がダンスをすることを許そうというきっかけになったのは、紀美子が一生懸命ダンスをする姿を見てその価値観を認めざるを得なかった。それほどあの場面での紀美子のダンスには人を魅了する力があったんです。
言葉ではどれだけ多くのことを語りかけられても千代の心は全く動かなかったのにダンスを一度見せられてその気持ちは大きく揺らいだのです。
言葉ではなく他の自己表現で自らの気持ちをを伝える。「ただ、君を愛してる」でもそうでしたが自らが得意なものを介しての自己表現(気持ちを伝えること)って言葉で投げかけて気持ちを伝える事よりも伝導率が高いって事なのだろうと改めて思い直しました。


一生懸命言葉で相手を説得しようとするよりも遠回りでも何か一つ心に伝わる表現が出来れば、もっといろんな人と分かり合えるのかも知れません。


この作品を見て一番気になったのは早苗役の徳永えりさん。途中までの出演でしたが、蒼井優さんと二人のシーンでも全く見劣りしないその演技力は素晴らしいの一言です。出演作はまだ多くないようですが、これから作品に出る機会も増える事を願ってます。
あとは蒼井優さんの言葉(方言)の違和感の無さには驚きでした。私も東北出身なので東北訛りにはうるさいのですが、これは本当に馴染み過ぎです。それがこの作品全体を素直に楽しめる原動力となっていると思うのです。
# 虹の女神上野樹里さんが秋田訛りを話した時にはその違和感にぶち切れそうになりましたが、大事なシーンではなかったので気にしないようにしています


で...。何度もくどいくらい書いたようにフラガールはとても面白い作品だったのですが、どうも何度も見たいと思えるような作品ではありませんでした。
私が今まで何度も見たいと思うくらい好きになった作品は「虹の女神」くらいなのですが、完成度で言えばフラガールには遠く及びません。
そもそもフラガールの圧倒的な完成度の高さは今年上映された他の作品と比べても比べるまでもないのです。「あそこがこうだったらなぁ...」というのは、早苗が引っ越すところくらいで、そこだって無ければよいというほどのものではありませんでした。そのくらい文句の付けようの無いシナリオだったのです。さらに見る側が脳内で補完すべき箇所は全くといっていいほどありませんでした。
だからこそ付け入る隙がないというか完璧過ぎて妄想の余地も何もない事が、欠点といえば欠点なのかもしれません。フラガールは面白くて楽しい作品でしたが、劇場でまた見たいとまでは思えませんでした...。


つくづく私は映画が好きなのではなく、「虹の女神」という作品が好きだったのだと思い知らされます。