リアルワールド - 桐野 夏生

隣に住んでるあまり話した事もない男が母親を殺した。何故かその逃走を手伝う事になってしまう物語。一人だけの視点ではなく、4人の女子高生と母親殺しの罪で追われる男子高校生の視点で描かれることで逃亡の始終が多面的に感じとれました。


読みながら最初に感じたのは息苦しさ。表向きの人間関係とその裏を見せ付けられることで、とても重苦しく息苦しく感じました。隠し事も実はお見通しだったり、仲がいいようにしていながらも実は嫌っていたり、なかなか読み応えがありました。というより辛かった...。
その人間関係をリアルに感じられたおかげか登場人物にはかなり思い入れが出来ました。悲しい結末になりましたが、そうした悲しさもリアルに感じられるくらい登場人物に入れこんでしまった作品なんて結構久しぶりです。すばらしい作品です。


非日常的なことに憧れる気持ちは持っている人は少なくないと思います。が、非日常はあくまで日常を実感するためのものでしかないんですよね。実際に非日常的なことばかりが続いたらとても体が持たないし、結局はそれが日常になってしまう。


読んだあとは脱力感でいっぱいです...。