「ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜」見たよ


好奇心旺盛なショーンはイタズラが大好き。見張りの牧羊犬・ビッツアーの制止もよそに、仲間の羊たちと今日も大騒ぎ! アカデミー賞受賞作『ウォレスとグルミット』シリーズに登場する人気キャラ・羊のショーンが主人公になったクレイアニメ

『ひつじのショーン』作品情報 | cinemacafe.net


他者に伝えたいことがあるときにもっとも使われるコミュニケーション手段は「言葉」だと思います。

相手に伝えたいことを「お互いが認識できる言語」に置き換えて話す、もしくは文字として書き起こして読んでもらうことが、もっとも過不足なくそして誤解なく必要な情報を相手に伝えることができると考えています。

ただ、じゃあ言葉を介したコミュニケーション手段であれば思ったことを完全に伝えられるのかというとそうではないし、むしろ「言葉で伝えれば齟齬なく伝わる」という思い込みをもってしまうことはとても危険だと思っています。言葉がもっとも便利なコミュニケーションツールであることはまちがいありませんが、言葉の万能性を過信して依存し過ぎないようにということは常に心がけています。


いや、心がけていたつもりだったのですが...といったところでさて本題。

今回見てきた「ひつじのショーン」ですが、毎週土曜日の朝にNHK教育で放送されているクレイアニメーションです。
もともとわたしはまったく興味がなかったのですが、子どもたちが「おさるのジョージ」とこれをすごく楽しみに観ていたのでつられて見るようになったのですが、これがもうものすごくおもしろいのです*1


そんな大好きな「ひつじのショーン」が映画化されるということを知ったときに「大スクリーンでショーンを観られる!」といううれしい気持ちと「セリフのないクレイアニメを90分間も楽しめるのか?」という不安な気持ちでいっぱいでした。

とくに後者の「セリフのないクレイアニメーションを90分も観てられるのか?」という点はすごく気になっておりまして、ふだんの4倍以上の上映時間となるとさすがに間がもたないんじゃないかと心配していたのですが観たらもう完全に杞憂でして、普段とはちょっと違うショーンやビッツァー、そして牧場主の姿が見られて90分まったく飽きずに見ることができました。


そもそも、わたしは「セリフがないまま90分話を見ていても楽しめるのか?」という点を心配していましたが、それってセリフや言葉による説明がない状態がずっと続くことに対する不安だったと思います。「説明がないことで話をちゃんと追い切れないんじゃないか?」とか「ショーンたちの心情の機微に寄り添えないんじゃないか?」ということを気にしていたと思うのですが、普段からテレビでショーンを見ているわたしがそんな心配をすること自体おかしいことにもっと早く気付くべきでした。

ショーンたちやビッツァーたちはたしかに言葉は話しませんが、彼らの表情や行動を見ていれば何を考え、目の前で起こっていることに対してどう考えているのかということは容易に想像がつきます。そのくらい画面からは彼らの気持ちが伝わってくるし、それは言葉で説明されるよりもたくさんの情報が込められています。


牧場主たちを眠らせるシーンのベタな演出*2もすごく好きだし、ショーンが悲しくて涙を流すというたいへんめずらしいシーンではショーンといっしょになってショックを受けて泣きそうになりました。あとはショーンとビッツァ―が抱き合っていっしょに喜ぶラストシーンは二人(二匹?)と一緒になってワーワーと喜んじゃたし、犬(スリップ)が別れを告げている*3の手紙をショーンが読むシーンではスリップの切ない心情が伝わってきてグッと胸が苦しくなりました。

言葉はたしかに便利なコミュニケーションツールだけれど、感情を伝える手段としては、言葉よりも「表情」や「いたたずまい」、「行動」を見た方が伝わりやすいんだということをあらためて思い知りました。


これはもうふだん「ひつじのショーン」を見ていない人にもぜひ見て欲しいすばらしい傑作です。


@MOVIX宇都宮で鑑賞

*1:ちなみに「おさるのジョージ」もすごくおもしろいです

*2:羊たちが繰り返し繰り返し目の前で柵をジャンプして超えて見せると見ている人が眠くなるというシーンですw

*3:手紙の内容に関する説明がまったくないのであくまで想像ですが(笑)