「キング・オブ・マンハッタン -危険な賭け-」見たよ

舞台はN.Y.マンハッタン、マネービジネスの成功者として全米から注目を浴びるロバート・ミラーだが、ロシアへの投資で巨額損失を生む。監査から隠蔽するため緊急に調達した4億ドル余は、早くも返済期日を過ぎた。友人ジェフリーからの最後通告は、金曜日までの全額返済。ロバートは窮地にはまる。猶予の5日間で会社売却による起死回生を計るが、運命の事故は運転中に起きた。同乗していた愛人ジュリーは即死。そして爆発炎上する車の背後には、通報せずに現場を立ち去るロバートの姿があった…。

『キング・オブ・マンハッタン -危険な賭け-』作品情報 | cinemacafe.net


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フォーラム那須塩原で観てきました。

もともと「ザ・マスター」と「愛、アムール」を観に行ったのですが、この2作品の上映時間のあいだにぽっかりと2時間空いてしまったのでなにかおもしろそうな作品はやってないかなと探してみたらちょうどこれが良い時間にあったので観てきました。


アメリカの経済界にその名を響かせたミラー(リチャード・ギア)が、やたらと不機嫌な不倫相手の機嫌を取るためにいっしょに別荘に出かけようとしたらその途中で事故っちゃったあげく不倫相手が死んでしまったのでうまくごまかそうとしたけれど....というお話ですが、着地点のおもしろい作品でした。

そんなにおもしろくはないですがわりと好きな作品です。


主人公のミラーはいろいろと事情もあって何とかいい値段で会社を売却しなければならない状況にあるのですが、そんな大事なときにこんな事故を起こしてしまったためにこれまで築いてきた地位を棒に振りかねない状況におちいってしまうのです。会社売却がうまくいかなくなれば株主やいっしょに仕事をしている仲間、そして家族に迷惑がかかると考えた彼は、どうしても捕まるわけにはいかないとあの手この手で逮捕の手から逃れようとするのですが、じょじょに自らの身に疑いがかかっていく流れがスリリングに描かれていて観ていて飽きることはありませんでした。


ただ飽きなかったというだけでそんなにおもしろかったわけではありませんし、わたしがこの作品をよかったなと感じたのはそういったスリルある展開ではなくて最後までミラーが捕まらずに終わったところがすごいなと思ったのです。


日本では世間の目というものが人々の行動規律を保つ役割を担っていますが、海外、とくにキリスト教圏では神への罪悪感が人々の行動規範を作っていると言われています。これは「罪の文化」と「恥の文化」の違いとも言われることがありますが、つまり日本人は世間と呼ばれる不特定多数の人々からの目をおそれて行動を律しているのに対して、欧米では絶対的な存在からの監視、もしくは自身の内面からの善性によって行動を律するという考え方です。いろいろとどうなの?と思うところはありつつも、わりとわかるなと思える部分もある考え方です。


この視点で言えば、自身の内面にある罪悪感かもしくは神の目を恐れたミラーがどこかの時点で捕まるのが自然ですし、じっさいに過去に観てきた作品でも犯罪を犯した人が最後まで隠し続けて終わる作品というのはあまりありませんでした。もちろん無くもないのですが、少なくともそれが常道ということはなかったと思います。

この作品でもミラー本人は会社を売却してしまったあとに自首を考えるのですが、結局彼はその罪を逃れたまま、そして輝かしい舞台に立ったままこの物語はおしまいを迎えます。


その終わり方がなんとも違和感があって「いったいこれは何だったんだ」というつかみどころのないもやもやとした気分のまま劇場をあとにしました。


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