2012年の下半期に鑑賞した作品を簡単にまとめてその中からおもしろかった作品をリストアップします。
2012年下半期の鑑賞本数は109本でした。月平均だと18本ちょっとですから悪くないペースだと思います。
まずは月単位でのまとめエントリーへのリンクです。
ここには毎月観た作品の中でおもしろかった作品をリストアップしています。
(毎月のまとめ)
次にこの半年間に観た作品の中でおもしろかった作品をリストアップします。
どれも同じくらい好きな作品なので、並びは見た順番にします。本当は10本以内にしたかったのですが、選ぶのがめんどくさかったので特に本数を気にせずに選びました。
1. おおかみこどもの雨と雪
泣き虫だった雨がオオカミの血を受け継いでいることと向き合って「何が自分にとっての役割でどうすればそれを果たせるのか」というところに目覚めるところは男の子の成長譚として説得力があってよかったですし、男勝りでワンパクだった雪が「どうすればこの社会で生きていけるのか?」という現実路線の方向に舵を切っていくところもなるほどなと感じました。
同じ親の元に生まれて同じように育ってきた二人が、現実主義的な女性と理想主義的な男性という違いに目覚めてそれぞれの道を歩んでいくという流れはとてもおもしろかったです。
「おおかみこどもの雨と雪」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
2. 苦役列車
「社会不適合者を遠くから眺めて楽しむ」と書くとたいへん失礼極まりない感じになりますが、"そばにいたら嫌だけど遠くから見ている分におもしろい人"というのがこの世にはいまして、まさにそんな人を観て楽しむという作品でした。
これまた言い方は悪いのですが、要は動物園と同じで「直接対峙すると危険な相手を檻に入れて隔離した状態(==自分に影響のない距離)に置いて楽しむ」作品でした。
「苦役列車」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
3. SHAME−シェイム−
本作は性依存症の男性ブランドンの日常を描いた作品でしたが、性への強い執着が平凡に生きる上での枷となり、徐々にペースを崩して堕ちていく男性の姿に終始いたたまれない気分になりました。わたしはなにごとにもハマりやすい人間ですので、いわゆる行動依存と呼ばれる依存症に陥ってしまう心境とそこから抜け出せない辛さはすごくよくわかります。
ですが、性依存は性的欲求という誰もがもっている基本的な欲求と結びつけて想像することができたので、他の行動依存以上にその中毒性に苦しむ心境と辛さが容易に想像できてしまい、そのあまりのおそろしさに打ち震えながら鑑賞しました。
「SHAME−シェイム−」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
4. テイク・ディス・ワルツ
ただ、こんなにも作品の放つ重苦しさに心底参らされてしまったはずなのに、観終えてしばらくしたらまた観たいなーなんて思ってしまっているんですよね。そんな不思議な魅力ある作品でした。
「テイク・ディス・ワルツ」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
5. 桐島、部活やめるってよ
わたしは、この作品を観ながら高校生活というのは楽しかったこともたくさんあったけどそれ以上に悲しいことも転がっていて、そのひとつひとつに絶望をしながら生きていたということを思い出しました。この言い方はもしかしたら大げさなのかもしれないけれど、でも学校という小さな世界の中に作られたヒエラルキーは、自分は何ができて何ができないのかということを白日の下にさらし、そしてそれによって個人の資質は冷静に評価される対象となります。
そうやって分かりやすいいくつかの要素だけで自分自身の存在価値が決定づけられてしまうことがどれだけ残酷なことなのかということはあえてここで述べるまでもないと思いますし、それによって下に位置付けられた者がおぼえる絶望がいかほどのものかということも語るまでもありません。
やはり日常は絶望で埋め尽くされていたんですよね...。
絶望という名のエーテルで満たされた学校という空間/「桐島、部活やめるってよ」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
6. マダガスカル3
動物園で与えられた役割をこなして楽に生きることしか考えられなかったアレックスが、たくさんの経験をとおして自分のやりたいことを見つけるということが3作目にしてやっとかなったわけです。ひさしぶりに訪れた動物園を眺める彼らのまなざしは、ひさしぶりに小学校を訪れた人が、学校や机やいすの小ささに驚いて懐かしむようなそんな視線のように見えたんですよね。この1から3で生まれた彼らの変化はただの変化ではなく、大きな大きな成長であってそのアレックスたちの成長がとてもうれしく感じられました。
「マダガスカル」「マダガスカル2」「マダガスカル3」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
7. 別離
この作品は、冒頭でも書いたとおり夫婦が離婚をしようとしたところから始まった一連の出来事を描いているのですが、そこで描かれる出来事というのは非現実的な出来事を大げさに描いているわけではなく、むしろ一定の年齢になったときに普通に起こりうるようなことを描いています。
「別離」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
8. 鍵泥棒のメソッド
本作の枠組みをざっくりとまとめると、35歳無職で自殺を考えている男性と便利屋として人殺しも手掛ける40代男性、そして何事も計画的に物事を進めたい雑誌編集者という普通に暮らしていたら絶対に出会うことがなかったであろう3者が出会い、そしてその仲を深めていくというお話ですので、まさにわたしの嗜好にぴったりと合致する内容だったわけです。
価値観を異にする者同士の反発と融和を見事に描いていたしラストの多幸感満載の終わり方は見てよかったと素直に思えるものになっていました。鑑賞後にこんな気分になれると、「あー、いい作品見たなー」と素直に思えます。
「鍵泥棒のメソッド」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
9. 白雪姫と鏡の女王
物語や登場人物は童話白雪姫のそれをベースにしているのですが、王子が姫を助ける物語ではなく白雪姫自身の成長譚として再構築されていてたいへんおもしろい作品として生まれ変わっていました。特に随所にちりばめられた笑いの数々は、誰かを傷つけて笑わせるような下品なものではなく、あくまで登場人物たちのユニークな会話や行動で実現していたことにいたく感心させられました。
「白雪姫と鏡の女王」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
10. 夢売るふたり
そんなシンパシーをおぼえる人たちが織りなす人間関係がまたすごくよくて、男女関係のめんどくささみたいなものを取り繕うことなくごろりと提示していたのがおもしろかったなと。浮気されたりお金をとられたりと本作にはさまざまな形でだまされる女性が出てくるのですが、その人たちの反応が人それぞれさまざまなんですが、どれもすごくリアリティがあるところがとても好きだなと感じました。
「夢売るふたり」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
11. ブラック・ブレッド
いつもどおり予備知識なく映画館に観に行ったのですが、割と衝撃的な内容に観終えてしばらくはどうしたらよいものかと途方に暮れてしまいました。冒頭の馬車が襲われて崖の下に落とされるまでの一連のシーンのあまりのリアリティには言葉を失うほど衝撃を受けましたし、ここから最後まで気の緩むところのない作品でしてとてもよかったです。
「ブラック・ブレッド」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
12. 伏 鉄砲娘の捕物帳
まったくかわいくないと思っていたキャラクターがいつのまにか愛しく感じてしまうという極端なほどの印象の変わりっぷりは「WALL・E」におけるキャラクターへの印象の変化をほうふつとさせられました。こんなに観る前後で印象の変わる作品もめずらしいなと思ったのですが、「WALL・E」と並べるにはやや見劣りするものの、でもとてもよい作品でした。
「伏 鉄砲娘の捕物帳」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
13. 恋と愛の測りかた
後ろめたさを感じながらも結局セックスまでしてしまった夫と、悪びれもせずにキスをしたり添い寝もしたけど、結局セックスまではしなかった妻。
これを言い換えれば「心の浮気はせずに体の浮気をした夫」と「体の浮気はせずに心の浮気をした妻*1」と言えると思うのですが、じゃあ心の浮気と体の浮気どっちが悪いの?と聞かれたら、既婚者である立場上「どっちも悪い」という模範解答を述べることしかできません。どっちが悪いと断ずることは自らの立場を危うくするだけなのでそんな比較はできないんですよ....。
「恋と愛の測りかた」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
14. 任侠ヘルパー
自分が歩む道として選んだ極道。
その世界で生きていくために身につけた、やくざらしい振る舞いのその隙間からかいま見せる彼の優しさというのは、決して相手を取りこむためにいい人ぶろうとしているのではなく、彼が生来持ち合わせたものであるということがはっきりと伝わってきてそれがまたすごく人間らしい仕草として感じられたのです。いままで草なぎ君が出ている映画は何本か観たことがありますが、その中でもこれが一番適役だったし彼の主演作品の中でも断トツでおもしろかったです。
「任侠ヘルパー」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
15. 「魔法少女まどか☆マギカ 前編 始まりの物語」 / 「魔法少女まどか☆マギカ 後編 永遠の物語」
独特の世界観もよかったし、その変わった世界観にも違和感なくのめりこめるストーリーテリングのうまさには感心しっぱなしでした。
さらに出てくるキャラクターはそれぞれが区別可能なほどに個性的な上にいずれもとてもかわいらしく、さまざまな人の嗜好にこたえられる網羅性を確保しています。世間的にはほむらちゃんが人気のようですが、わたしはマミさんがすごく気に入りました。
「魔法少女まどか☆マギカ 前編 始まりの物語」 / 「魔法少女まどか☆マギカ 後編 永遠の物語」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
16. 星の旅人たち
本作で、トムは息子がなぜ巡礼の旅に出たのかを知りたいと思うわけですが、普段から息子と睦まじく言葉を交わしていたわけではないのでその本意がまったく分からず、そのことがトムを苦しめます。もともと価値観を異とするところの多い二人だったのですが、だからこそ息子が歩こうとした道を歩くことで息子の考えを知りたいと考えたんだろうなと思ったし、親が子を想う気持ちとしてはすごく分かるなと感じたしグッときました。
「星の旅人たち」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
17. フランケン・ウィニー
生と死という絶対的な境界を科学の力であっさりと超えてしまったことに端を発して起こるさまざまな出来事がとてもユニークでおもしろかったです。世の中には「出来ること/出来ないこと」という区分だけでななく、「やっていいこと/やってはいけないこと」ということがあるという主張の提示はとてもおもしろいと感じました。
「フランケン・ウィニー」見たよ - 子持ちししゃもといっしょ
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鑑賞本数が多かったというのも関係あるかも知れませんが、上半期よりもかなり豊作だったような気がします。食わず嫌いしなかったおかげでたくさんの良作も観られてよかったです。(おしまい)
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