「ももへの手紙」見たよ


ももへ――その一言だけを手紙に遺して、亡くなった父と喧嘩してしまったももは、母と2人、東京から瀬戸内海の田舎に引っ越してきた。辿り着いた汐島は、昔ながらの家々と自然に囲まれたどこか幻想的な町。なじめない新しい生活に、ぽっかり穴の開いたももの心。「お父さん、本当はなんて書きたかったの…?」ある日ももは、屋根裏で一冊の古めかしい本を見つける。その日から、ももの周りで不思議なことが起こり始める――。

『ももへの手紙』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮で観てきました。

予告で観た絵柄がいまいち好きになれなかったので観に行こうかどうか迷ったのですが、おもいきって観てきました。
観に行く決心をした理由はいくつかありますが、一番大きな要因は「マイマイ新子と千年の魔法」という作品のことを思い出したからです。「マイマイ新子と千年の魔法」が公開されたときも、同じように絵が苦手だからという理由で観に行こうかどうか迷ったのですが、結局どうしても観たくて観に行ったらすごい傑作だったという経験があります。

見慣れない絵柄の作品を回避しがちであるというのは自覚していましたので、絵の好き嫌いだけで映画を観に行くかどうかを決めるようなこともあまりしたくないという反省もあって、観に行くことにしたのです。


それで映画はどうだったのか?というとこれがまたすばらしくおもしろかったです。
ケンカしてしまった父と仲直りをする前に父が亡くなってしまった女の子が、移り住んだ先の島で妖怪たちに振り回されるというファンタジーなお話でしたが、憧憬ともいえる舞台や世界観を丁寧に描くことで、ファンタジーとリアリティのバランスがよくとれた作品でした。子どもにしか見えない妖怪や死後の世界という設定や物語は記憶の片隅に追いやられている子どものころの記憶を呼び戻してくれるような内容でしたし、ラストの盛り上がりもふくめてたいへん盛り上がるよい作品でした。

また、エンドロールで流れる原由子の歌声は、この作品にとてもマッチしていて聴き入ってしまいました。


以前、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の感想でも書きましたが、初めて近親者を喪失する経験というのはその人にとってとても大きな体験となります。ももにとってはそれが父との別れだったのですが、その別れ際に仲たがいをしたままで別れてしまったために、何も齟齬がないままでの別れ以上に心残りを作ってしまっていてそれをどう乗り切るのか?というところがこの作品を特徴づける部分となっています。

父が残した「ももへ」という書き出しだけの手紙は、父がももに対して何かを発したかったという意思表示であり、その言葉を知りたいのに父なき今はもう聞くことができないという設定がとてもうまいというか、変ないい方なんですけどロマンチックなんですよね。もう聞くことのできない言葉に耳を傾けるというシチュエーションがとてもよく活かされていたのもよかったかなと。


そして、実は後半のあるシーンを観た瞬間にわたしはこの作品の見方がガラリと180度変わってしまったシーンがあってそのことについて書きたいと思っていたのですが、何となくまとまらないのでもう一度劇場で観てからまとめたいと思います。そのシーンはもものお母さんの手鏡が割れてしまったあとにお母さんが駆けつけてくるシーンです。





(関連リンク)

公式サイトはこちら