「ここ数年に読んだ本の中で一番好きな本はなに?」と問われてもそれはたくさんありますのでなかなか答えられませんが、「ここ数年で一番記憶に残っている本はなにか?」と問われたら「正義のミカタ」だと答えると思います。もちろん、大好きな作品です。
- 作者: 本多孝好
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/06/25
- メディア: 文庫
- クリック: 15回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
ナツイチにも選ばれていたので読んだことがある方も多いと思いますが、簡単にあらすじを説明すると「高校までいじめられっこだった亮太が"正義の味方研究部"という部活に入って大学の秩序を守る正義の味方を目指して活動する」というのが前半部分で、後半は亮太が尊敬していた人と対峙するという状況を経て「そもそも正義ってなんなの?」というところに気付いていくところを描いています。
とりあえず全部のシーンが大好きなのですが、その中でもとりわけ好きなのが亮太が学校の秩序を守るという大義を掲げて正義を振りかざしたセリフを吐いてしまい、それに気付かされてハッとするシーンがすごく大好きなんですよ。いじめられっこだった自分が、いつの間にか弱者の気持ちを簡単に無視して正論を吐く正義漢に成り下がっていることに気付いてショックを受けるシーンなのですが、こういうシチュエーションってよくあるんじゃないかなと。
立場が変わることで意見を変えることはあまり褒められたことではないかも知れませんが、でもやはりそれってしょうがないことで、誰だって自分の立場を踏まえてしか意見は言えないと思うんですよ。だから立場によって意見を変えることを絶対によくないことだとはわたしは言えないんです。
でもそう振る舞うことの良し悪しとは別に、"身の丈"とか"価値観"という言葉をわたしはすごく大事だと思っていて、つまり自分が本音として語れる以上のことって人間はなかなかそれをできないんじゃないかと思うんですよ。この本で言えば、亮太は力や正論による正義の断行ができない人間なんですが、理屈や経験からそれは正しいんだと思い込んでやろうとしたところで自分の本当の気持ちと行動のギャップに気付いてハッとするわけです。
最近と言ってもここ一年くらいなんですが、私も自分らしくない発言*1に気付いた亮太がハッとさせられたような瞬間と毎日向き合って生きてきました。いかにもちゃんとしているふうに論理を組み立ててしゃべる自分と、それが本心ではないことに気付いてうんざりしている自分のいたばさみでした。どっちの自分も困ってました。
そんなふうに落ち込んでいるときにみた今日の月は本当にきれいでした。走るのを止めて不意に立ち止まって見つめてしまうくらいにきれいでした。うれしくていまも月を眺めています。今日は眠れません。
(関連リンク)