「罪と罰」見たよ


舞台は栃木。刑事の松江伝作は妻と二人の子供と家族4人で幸せに暮らしていた。彼は正義感が強く、善悪には厳しい性格で、罪に対して罰が軽く思える現在の司法制度にも疑問を抱いていた。

そんなある日、愛する妻が愛する息子によって殺されてしまう。事故なのか事件なのか?この一件で松江は責任を取って刑事を辞職。犯罪者の父であり、被害者の夫となってしまう。

宇都宮ヒカリ座

(注意)
たぶんこのエントリーに限って言えば気にする人はいないと思いますが、本エントリーは作品の内容・結末に触れている部分がありますのでご注意ください。


宇都宮ヒカリ座にて。


正直、話のネタになればいいやくらいの軽い気持ちで観に行ったのですが、強く世に訴えたいことがあって撮られたものであり、明確なテーマとそれを伝えることに腐心している様子が伝わってくるよい作品でした。一般的なロードショー作品と同列に並べられるほどのクオリティではありませんが、覚悟していたよりはちゃんと映画らしい作品でして2時間楽しく鑑賞できました。
ただ、ガッツ石松が主演兼監督なのかと思っていたら別に監督さんがいるようで、ガッツさんには「総合監督」という肩書きが付いているだけだったというオチにはちょっと笑ってしまいました。


本作は「日本における犯罪加害者への罰則の甘さ」を糾弾する内容でして、予想外に重いテーマを掲げていることに驚いたわたしは思わず腰が抜けそうになりました。ただ、テーマ自体は重いのですがレトリックや隠喩などが使われることは一切なく、もうまっすぐすぎるくらいにまっすぐに思いの丈が詰め込まれているので、たとえば「このシーンが本当に言いたいことは何なのか?」と分析する必要はまったくありませんし「このシーンは何かに関する布石なのか?」ということも気にする必要はありません。
普段観ている映画では「このシーンの意図がよくわからない」とか「すごく気になるんだけどどういう意味なんだろう」なんてことを考えながら観ることが多いいので、この作品のようにとにかく目の前にある映像を観たままに受け取るだけでよいという分かりやすさはなかなか衝撃的でした。ですが、一方で「最近こういう映像をどこかで観たような気がするな...」ということも頭から離れなくてしばらく考えていたのですが、不意に「免許センターで見せられる講習用のビデオ」と似ていることに気付いたのです。そりゃ分かりやすいわけだ...。


そんなわけで基本的には重い話をまっすぐに描いた作品なのですが、作中ではいくつかガッツ石松らしいユーモア*1が組み込まれていました。これについては重過ぎる話だけではサービス精神が無さすぎるということだったようなのですが、その部分だけが妙に浮きまくっていたのがおかしかったです。特に最後にガッツ石松が息子の罪を詫びるために墓前で切腹するシーンがあるのですが、腹を切ろうとナイフを手にする直前に突如ひとりでガッツじゃんけんを始めるという唐突さには腹を抱えて笑いました。
笑いをとるにしてももうちょっとやり方が...とも思ったのですが、このストレートなところもまた"らしい"といえばそのとおりでして、もうこれでいいやという気分になりました。


とまあ、いろいろと書きましたが「結局どうだったの?」と聞かれたらわたしはすごくおもしろかったと答えたい、そんな作品でした。
ちゃんと言いたいことがあって撮られた作品でしたし、その内容に同意できるかどうかは別として言いたいことや意思がちゃんと伝わってきたところはよい作品だったという評価に値するものだったと思います。

*1:舞台あいさつでご本人がそう語っていました