わたしの「心に残った本」は遠藤周作の「海と毒薬」です。
- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/07/15
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小学生の頃は本が好きで学校の図書館に入り浸っていましたが、高学年くらいから高校2年生になるくらいまではほとんど本を読みませんでした。本を読まなくなった理由は特になくて、ゲームとか部活とかもっと面白いものが見つかったとかそんなことだったと記憶しています。
さて。
高校生になったからと言って本を読みはじめることもなく、1年生の頃はゲームや友達と遊びまわることに忙しくしてましたが、少し経つと大学進学に向けて学外の模擬試験を受けることが増えてきました。今はどうか知りませんが、わたしが高校生だった時分は駿台や代ゼミの模擬試験が多かったです。それと月に何度くらい受けていたのかは覚えていませんが、そこそこの頻度で受けていたことは覚えています。
わたしは国立理系進学の希望だったので試験はいつも5教科受けていたのですが、その中でも物理と数学と国語(現代文限定)は大好きな科目でした。
数学は小学生の頃から大好きでいつも数字を眺めているのが好きでしたし、物理は数学を実世界の現象に適用しているのがすごくワクワクして大好きでした。このあたりは理系だったので当然なのですが、それ以上に好きだったのが国語、それも現代文の試験でした。
模試を受けたことがある人はご存知だと思いますが、現代文の試験というのは現代文学の中から小説の一部を抜粋し、それについての設問に回答するというものです。著者の意図を問うたりするものが多かったのですが、読めば分かることばかりでしたので労せず点数が取れて非常に楽な科目だと感じていました。
とは言え、「楽に点数が取れるから国語が好き!」というわけではなく、この試験で取り上げられる小説が軒並みすごく面白かったので模擬試験の国語が大好きだったのです*1。ものすごく気に入った時には帰りがけに本屋で本を買って帰って続きを読む、なんてこともよくしていましたし、そんなふうに買って読んだ本は100%ハズレがありませんでした。
その中で出会った一冊が「海と毒薬」です。
遠藤周作さんの著書は模擬試験ではよく採用されていたのでよく読みましたが、たぶんわたしが初めて読んだ遠藤周作さんの著書はこの「海と毒薬」だったと記憶しています。戦時中に捕虜の生体解剖実験に立ち会った一人の医師のお話なのですが、ひとつひとつの描写の切実さがあまりにグイグイと迫るものを感じさせるパワーがあり、読むのが辛いのに繰り返し読みたくなるという非常に不思議な作品でした。
パンを握ったまま亡くなったお婆ちゃんが出てくるくだりは、あまりにいたたまれなくて嗚咽してしまうほど引き込まれました。
この作品をきっかけに遠藤周作さんの著書を読むようになり、そしてキリスト教って何だろう?と改めて興味をもつようになりました。
さらにキリスト教つながりで三浦綾子さんの著書もすごく読みましたし、この頃から本を読むことが日常的な行為としてわたしに身につくようになったのです。
毎日本を読むのが当たり前になり、次から次へと本を読むようにそのピークは高校3年生の夏休み。毎日自宅近くの海に本を片手に出かけ、そこで日焼けしながら読書するということを日課にしていたのですが、毎日本を読み続けました。一ヶ月で50冊くらいの本を読んだのは後にも先にもこの時だけです。
この頃に比べればペースは落ちたものの、今でも毎日必ず一度は本を読むのが日課になっています。
そんなわけでわたしに読書のもつ魅力を教えてくれた作品、それが「海と毒薬」です。
あの初めて読んだ時のインパクトの強烈さ。あれを味わいたくていまだに本を読んでいるんじゃないかと思ってしまうくらいですが、でもあの多感な時期だからこそ感じるものがあった作品だと思うし、同じような衝撃を受けるのはちょっと難しいかも知れません。ただ、このホントの出会いには心から感謝しています。
あの時この本を読んでいなかったら、こんなに本を好きにはならなかったと思うし、そのくらい強く私の心に残っています。
もし質問が「一番好きな作品は?」だったら「流転の海」とか「夜のピクニック」とか「夏の庭」とか「カラフル」とか「天国はまだ遠く」とか「ボトルネック」とかいろいろとあるのですが、一番心に残っている作品はこれです。
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(関連リンク)
*1:実際、学校の定期試験では国語はノートの取り方や授業への態度を評価する向きが強くてあまり好きではありませんでした。