いじめられっ子で繊細な12歳の少年、オスカー。友達が欲しいという孤独な少年の願いは、同じ12歳のエリが父親と共に隣の家に越してきたことで叶えられた。しかし、青ざめた顔をしたエリの外出は夜の間だけで、彼女はキャンディも食べられない。そしてエリが現れたのと時を同じくして、街では不可解な失踪や殺人が次々と起こり始める。恐ろしい話が大好きで内向的なオスカーは、エリがヴァンパイアだと気づく。ふたりの幼い恋が終わるかに見えたとき、オスカーに最大の悲劇が襲いかかる――。
『ぼくのエリ 200歳の少女』作品情報 | cinemacafe.net
(注意)
以下、本作の内容や結末に触れている部分がありますので未見の方はご注意ください。
銀座テアトルシネマにて。
雪に囲まれた閉鎖的な地域を舞台に描かれるとても静謐でそして残酷な物語。
予告で観たときに感じた印象とはまた違った印象を受けましたし、受け取り方が難しいラストでしたので賛否ははっきりと別れそうですが、わたしはこの作品がとても気に入りました。今年観た作品の中ではかなり上位に挙げられるくらいよかったし、現時点では年間ベストに選んでしまいそうなくらいの勢いで好きな作品になりました。
本作は12歳の少年とヴァンパイアが恋に落ちるお話。
わたしは雪国生まれということもあって雪は特段珍しいものではなかったのですが、関東以南の人にとってはものめずらしいものらしくてちょっと雪が降るだけで道路が混みあったり、ワーワー騒いだりしています。移り住んでしばらくはずいぶんとそんな雰囲気をバカらしいと眺めていましたが、雪の少ない地域に住み慣れてくると、そういった雪に対する気持ちも何となく分かるというか、雪は決してどこにでもあるものではなくそれだけの寒さをたたえた場所にしか存在できない特別なもののように感じられたりします。
話はちょっと変わりますが、寒さというものは死や永遠を想起させます。
これはわたしの直観からくるものなので一言でその理由を言うのは難しいのですが、例えば寒くて体温が下がりすぎると人は死んでしまいますし、そもそも人は死ぬと体が冷たくなることからも死が連想されます。また、秋田県は自殺率が日本で一番高いと言われていますが、その一因としては日本で一番日照時間が少ないから鬱々とした気分になって死にたくなるのではないかという説もあります。秋田出身としてはさすがにそれは....と思いますが、でも温暖な気候であればあるほど陽気な人が多いという印象がありますので、逆説的ですが寒さが自殺につながるということにはそれなりの説得力があると思います。
エリという永遠に年を取らないヴァンパイアという存在はまさにこの作品の舞台である雪に埋もれた地域のもつイメージそのものであり、死や永遠を体現した存在となっています。両者のもつ美しさ、はかなさが映像にとてもよく反映されていて非常につよく伝わってきました。
音楽も極力抑えられていたのはよかったです。
結局、オスカーはエリと結ばれてハッピーエンドなのかと思いきや、でも冷静に考えれば決してそうではないなと思うし、むしろバッドエンドのようにしか思えないのです。オスカーがエリの年齢を超えて成長していけば、冒頭でエリと一緒に引っ越してきた血を集めていたおっさんのように彼女のために血を集めるようになるのです。たぶんあのおっさんも元々はオスカーと同じような出会いを経て二人で暮らすようになったんじゃないかと思うし、200歳というエリの年齢を考えると、おっさんの前やそのまた前にも同じようにエリを支えた人がいたことがうかがえます。結局、人間ではないエリにとっては身の回りにいてサポートをしてくれる人をいつも必要としていて、支えていた人がいなくなればまた新しいサポートを探して生きながらえているわけです。「ヴァンパイアと人間の恋」という一見ロマンチックな物語のようにも見えるのですが、実際は永遠に続くであろうエリの生命活動にオスカーが組み込まれてしまっただけであり、そのことに心底やりきれない思いを抱いてしまうのです。
ヴァンパイア好きにはグッとくるシーンの多いすばらしい傑作でした。
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