「ボトルネック」読んだよ

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。

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誰かに進められたわけでもありませんし、特におもしろいと聞いたわけでもなく、何気なく本屋で目にして買った本でしたが、わたしの価値観を揺さぶる衝撃的な作品でした。日々を漫然と生きているわたしにとっては心が折れそうになる内容であり、でもこれから毎日を前向きに生きる活力を生み出す内容でもあるとてもインパクトある一冊でした。世の中の生きてる人全員必読です。


人生は選択の連続だとはよくいったもので、朝起きてから夜寝るまで我々はたくさんのことを選びながら生きています。
ルーチン化されたものをただこなしているだけで選択しているわけではないという主張もあるかも知れませんが、それも日々の選択を積み重ねた結果のルーチンなわけですからやはりすべては選択した結果であるといえます。


さて。突然わたしのことをお話させていただきたいのですが、わたしは何かを決めることがとても苦手です。
ご飯を食べに行ったときもぎりぎりまで何を注文するのかで悩みますし、映画を観に行くときもどれを優先して観に行くのかで悩むこともあります。
それでもどれかを選ばなければ先には進めないので渋々どれかを選択をするわけですが、悩みながらも選択する踏ん切りがつくのって結局「どれを選ぶのが一番いいのかという正解なんてない」と割り切れることができるからなのです。
事前に想像して検討することは出来ますが、実際に実現できるのは選択したことだけであり、結果の比較というのは絶対に出来ません。できるのはあくまで可能性の比較です。
つまり、明確な正解というのがないからこそわたしは選択出来るのです。


ところがこの作品のすごいところは、「正解なんてない」という前提をものの見事にひっくりかえしてしまったところにあります。
本作は、自分が取ってきた選択よりも正しい選択が選び取られた世界を見せ付けられた人の物語であり、これほど残酷な物語をわたしは知りません。最初はまったくその威力に気付いていなかったのですが、中盤にふと気付いてしまってからは本当に厳しかった...。


ただ、読み終えて思ったのはわたしがこの本を読んでショックを受けたのは、それだけ毎日を精一杯生きていないと思っているからだろうなと思うのです。常に最善を尽くすこと。もちろんそれが簡単には出来ないとはわかっていますが、少なくともこの本を読んでショックを受けない程度には頑張って生きようと感じました。