「家族の言い訳」読んだよ

家族の言い訳 (双葉文庫)

家族の言い訳 (双葉文庫)

家族に悩まされ、家族に助けられている。誰の人生だってたくさんの痛み、苦しみ、そして喜びに溢れている―。作詞家・森浩美がその筆才を小説に振るい、リアルな設定の上に「大人の純粋さ」を浮かび上がらせた。『ホタルの熱』『おかあちゃんの口紅』はラジオドラマや入試問題にもなった出色の感動作。あなたの中の「いい人」にきっと出会える、まっすぐな人生小説をお届けします。

http://www.amazon.co.jp/dp/457551246X

自分の性格で嫌なところというのはたくさん思いつくのですが、その中でも指折りの嫌な部分は「すぐに言い訳をしてしまうところ」です。
と、そんなことを考えていると、「相手に誤解を与えたままにしたくないから」とか「本当のことを伝えたいから」といった、"言い訳してしまう言い訳"をすぐ考えてしまうあたりに、救いようのなさを感じてしまいます。
他人が言い訳しているのを聞いていると「言い訳なんかしてもいいことないよなあ」などと言い訳に対して批判的な態度を示してしまうくせに、実際は自分が一番言い訳してるんだもんなあ。


言い訳してしまう一番の理由について考えてみたのですが、そもそも言い訳が2種類あることに気付きました。
それは他人に向けて発せられる言い訳と、自分に向けて発せられる言い訳の2つです。


他人に向けて発せられる言い訳というのは、自分の保身が目的なのだと思います。
相手に悪く思われたくないから思わず自分自身をフォローする言葉が出てしまう、それがこれに該当するのですが、わたしはこれが多くて本当に嫌になっちゃいます。


そしてもうひとつの自分に向けて発せられる言い訳というのは、自分の力ではどうにもできないことを無理やり納得しようとしたときに出てくる言い訳です。不本意なことであっても現状を受け入れないといけないというときにはこちらの言い訳が顔を出します。


本書は、他人に向けた言い訳よりも発した本人に向けられた言い訳が主題の短編が集められた作品です。
言い訳というのは上に書いたとおり、発せられる相手が自分か他人かによってその意図が異なると書きましたが、家族に向けて発せられる言い訳というのはこの両方が含まれているのです。つまり家族への言い訳というのは、見栄や外聞からくる場合もあるのですが、それと同時に、本人もしくは家族全員が何かを受け入れないといけないときにも使われる場合があるのです。本書を読んでいてそのことに気付いて、へえーと感心させられたのです。


ひととおり読み終えた時に帯に書いてあった「一番言い訳が必要なのは家族です」という言葉を思い出して、言い得て妙だなと感じたのでした。


非常におもしろかったです。