「図書館の神様」読んだよ

図書館の神様 (ちくま文庫)

図書館の神様 (ちくま文庫)

主人公は、清く正しい青春をバレーボールに捧げてきた、その名も清(きよ)。あることがきっかけで、夢をあきらめて教師になるべく、海の見える中学校に赴任する(教員採用試験に受かっておらず、臨時雇いではあるが)。そこで、思いがけず文芸部の顧問となった清に訪れた変化とは……。「卵の緒」で坊っちゃん文学賞を受賞した瀬尾まいこの、デビュー第2作。大幅にファンを増やした評判作の、待望の文庫化。単行本未収録の幻の短篇「雲行き」も収録。

http://www.amazon.co.jp/dp/4480426264

読み始めてすぐに「これは好きじゃないかも...」と気が滅入ってくるのがはっきりと分かるくらいに主人公である清の性格がどうにも受け付けられませんでした。真面目一辺倒で生きてきた人間のもつ「自分は正しいことを言ってるんだから」的な傲慢さってものすごく嫌なんですよねえ。大嫌い!!
今まで瀬尾さんの本でこういう不快感を感じたことがなかったために面食らったというのもありますが、それにしてもこの不愉快さにはかなり参りました。


でもまあ、瀬尾さんの本だし最後まで読もう...と、何とか自らを奮い立たせて読み進めたのですが、最終的には絶賛せずにはいられないほど作品の世界へと引き込まれてしまいました。この本を読むだけでものすごい濃度の青春を体感できることに驚き、そして感動しました。わたしのような懐古趣味な人間が「青春」と書くとどうにも安っぽく感じられるのであまり書きたくないのですが、でも本当にそうとしか言いようのないすばらしい体験を本書が経験させてくれたということをここにはっきりと書いておきます。


本書のおおよその流れとしては「天国はまだ遠く」と同じで、性格も考えもおおよそかみ合うことのなさそうな二人が日々を一緒に送るうちに互いを理解しあっていくというストーリーなのですが、このテンプレートって意外に難しいと思うんですよね。
例えばこのテンプレートを他の人がアレンジするとすれば、間違いなく恋愛に発展させたくなるはずなのです。
でも瀬尾さんは絶対にそうはしないし、さらに言うと、恋愛関係というものを両者の間に匂わせることすらさせないのです。これはたぶんかなり意図的に描いているのではないかとわたしは思っているのですが、このように表現することの影響というのは非常に大きいと思うのです。


このあたりはまだうまくまとまっていないのですが、女性視点を押し付けつつもそこに押し付けがましさが感じられないというのはやはり両者に恋愛感情がないことが関係しているのではないかと思うわけです。文章で描かれる視点は常に女性側にありながら、でも男性もそれを自然と受け入れられる男女関係の描き方って実はすごく難しいと思うんですよね。
これについてはもう少し他の作品を読んで考えがまとまったらまた何か書こうかな。


とにもかくにも瀬尾さんらしい素敵な作品でした。