- 作者: 森絵都
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/04/10
- メディア: 文庫
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才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
http://www.amazon.co.jp/dp/4167741032
まったく独立した6つの短編からなる作品ですが、いずれも惹きつけられる作品ばかりでとてもよかったです。
全体の感想を書こうと思ったのですが、これだけおもしろい作品が並んでしまうとそれぞれの感想を書きたくなってしょうがないので、とりあえず特に面白かった3作品の感想を書きます。
犬の散歩
途中まで流し読みでしたが「犬は、わたしにとっての牛丼なんです。」と言う一文に思いっきり惹き付けられてしまいました。
ちなみにわたしにとっての牛丼は映画です。
ジェネレーションX
6作品の中では一番好きな作品。
高校を卒業する時に野球部の仲間たちと10年後にみんなで集まって草野球しようぜという約束をした一人の男性の物語なのですが、刻々と変わっていく状況を理解するのがとにかく楽しくてあっという間に読みきってしまいました。
仕事をとるか、それとも10年前の約束をとるのか。
自分にとって一番大事なものは何なの?ということをさらっと問いかけてくるところにグッときました。
風に舞いあがるビニールシート
表題作だけあってかなり力が入っているなあという印象を受ける作品でした。
風に舞い上げられるビニールシートのように人の命が軽んじられる世界がこの世のどこか存在するという事実を知ってしまった一人の男性とそんな男性を好きになってしまった女性。交わることのない、むしろ背反するとさえ言えるほど価値観の異なる二人の結婚生活は、「ヤマアラシのジレンマ」という言葉を思い出してしまいます。
世界で一番好きな人相手でもぜったいに譲れない大事なもの。
わたしにはそこまで大事なものは無いのですが、そういうものをもちながら、そして守りながら生きることのしんどさだけはちゃんと理解しておきたいと思います。そしてそういったものをもっている人への敬意も決して忘れないように。
[追記]
近々NHKで表題作のドラマ化が予定されているそうです。
5月から放送の土曜ドラマは「風に舞いあがるビニールシート」。森絵都さんの直木賞受賞作品「風に舞いあがるビニールシート」が原作です。吹石一恵さん主演で、UNHCR東京事務所で働く若き日本人女性の姿を描きます。
吹石一恵さん主演!「風に舞いあがるビニールシート」 | 土曜ドラマ | NHKドラマ
放送開始は2009年5月30日からだそうですのでそちらもぜひ見てみようと思います。