「セブンティーン・アゲイン」見たよ


高校バスケットボール部のスター選手、マイク・オドネル(ザック・エフロン)は、大学のスカウトが見守る大事な試合を投げ出し、恋人・スカーレット(レスリー・マン)の元へと向かった。そう、彼女にマイクの赤ちゃんが出来たことが発覚したのだった。それから20年、マイク(マシュー・ペリー)の栄光の日々は過去のものとなり、スカーレットとの結婚は破綻し、会社では昇進から外され、思春期の子供たちからは負け犬呼ばわり…。そんなマイクは、高校時代からの親友で、ソフト開発が成功し大金持ちになったネッド(トーマス・レノン)の家に転がり込む。が、ある日突然、マイクは17歳に戻ってしまう! これで人生をやり直せるはずが、外見は17歳でも、30いくつのオヤジの態度は現代の高校生にはダサ過ぎて――。

『セブンティーン・アゲイン』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。ザック・エフロン主演の最新作。
もしも20年前の自分に戻れたら....。こんな魅力的なテーマとザックが主演というだけで面白くないわけがないと思っていましたが、その期待をはるか上回るほどとてもユニークでグッとくる作品でした。すごくよかったです。


自身の人生を振り返ってみたときに「あの時に戻りたいなー」と思える時が誰でも必ずひとつはある、というのはわたしの勝手な思い込みですが、とにかく誰でもそういう時代があるものだとわたしは確信しています。
例えば、進学する高校/大学を決めた日や結婚を決めた日、子どもが生まれた日というある一日かもしれませんし、もしくはピンポイントな一日ではなく「小学生の時」とか「高校時代」という幅広い期間かも知れません。とにかく、自身が今よりも輝いていた時、幸せだった時というものを誰もが心の中に持っていて、戻れるのであればぜひその日へ戻りたいという願望を抱いているのは決して特殊な感情ではないとわたしは信じています。マイクのように「学校中のヒーローだった17歳」という過去の自分にあこがれる気持ちもすごくよくわかるし、映画館の雰囲気からも鑑賞していた人たちもまたこの感情にはそれなりに共感出来ていたように感じました。


わたしがこの作品をおもしろいと感じた一番大きなポイントは、こういった懐古的な感情を満足させるにとどまらなかったというところにあります。
人生に行き詰っていた矢先に体だけ20年前に戻れたわけですからそこから新しい人生を切り開いていけばよいと誰もが思うのですがそれがそうは出来ないところがとてももどかしいのです。
離婚裁定中の妻は他の男と出かけようとしているし、同じクラスの娘はバカな男と付き合っていて場所をわきまえずにキスをしたりしてこれを自分の事に置き換えて考えるとものすごくどうしようもなくブルーな気分になってしまいます。あげくの果てには自分の娘に言い寄られたりしちゃってね....。もう本当に泣きたくなるほどです。
例え肉体が20年前に戻れたとしても、この20年間で築き上げたものをすべて失う覚悟がなければ何も変えることなど出来ないんだというメッセージがこの作品からは感じられたし、実際に失う覚悟が出来る人なんてほとんどいないだろうと思えるところには言いようのない無力感を感じました。過去に選択したことは、例え過去に戻ったとしてもなかなか変えられないというのはたしかにそのとおりかも知れないなとつよく実感しました。


さらに辛い毎日から逃避したくて思い浮かべる過去というものは、本当に自身が過ごした過去そのものではなくてこうあってほしいという願望で色づけされたものになっています。ですからそのような「過去」というのは崇拝対象の偶像のような、"本来あったそのもの自身"ではないのだということもこの作品は教えてくれます。
全体としては非常に楽しい作品なのですが、決して笑っておしまいというお話ではないところにとても魅了されてしまいました。
過去にすがりたくなっている人も自然と前向きになれるすばらしい作品だったと思います。



それにしてもザックはかっこよくて、彼のキャラクターあってのこの作品だということをつくづく実感しました。
38歳のさえない中年男が自分が学校中のヒーローでいられた17歳当時に戻りたいと願うその気持ちを投影する対象として、ザックはまさに文句のつけようのないほどの適役だったと言えます。わたしは「ハイスクールミュージカル」のザックしか知らないのですが、その作品での立ち位置とまったく同じ「バスケが得意な学校の人気者」という役を今回も彼は演じています。たしかに彼にはそんなイメージがありますしこれ以上ないほど説得力のある配役だと思います。


加えて、マイクの友人であるネッドの発言や行動があまりにおもしろ過ぎて彼の一挙手一投足から目が離せず、ラストの方になるともう彼が出てくるだけで吹き出してしまうほどなかなかよいキャラクターでした。作品の展開の都合上、どうしても部分的にテンションが落ちてしまうところがいくつかあるのですが、そういったところでうまく笑いで盛り上げていたのが印象的でした。


すごいいい映画でした。


[追記]
そういえば映画の公開にあわせてザックが来日しているようです。


この女性たちに混じるのは気が引けますが、それでもザックを観てみたかったなと思います。


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