分身


分身 (集英社文庫)

分身 (集英社文庫)

私にそっくりな人がもう一人いる。あたしにそっくりな人が、もうひとり。札幌で育った女子大生・氏家鞠子。東京で育った女子大生・小林双葉。宿命の二人を祝福するのは、誰か。

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[注意]
本の内容についてかなり触れているので未読の方でこれから読もうという方はご注意ください。


この作品のような重苦しい雰囲気の独白から始まる書き出しは「殺人の門」のようでして、読み始めた瞬間からかなり気分が高揚してしまいました。これから始まる物語が決して洋々としたものではいないことを暗示していてとても薄暗い気分になれますし、これから先で語られる話はたぶん知らない方が気持ちよく生きていけるんじゃないかと感じられる雰囲気がとても興味をそそります。
東野さんの本は長さの割りに読みやすいとよく言われるのですが、単に読みやすいだけではなくて冒頭の引力がとても強いんじゃないかなと読みながら感じました。


本書のテーマは人間のクローンを作ることの是非についてです。
自分らしさなんて言葉をたまに聞きますが、結局それって自分が他の誰とも違うということが前提になっているわけでその大前提が崩れてしまった時の怖さと言うものを本書を読んでつよく実感しました。自分自身はユニークであると思えることがどれだけ大事なことなのかということをつよく感じられる作品でした。


そういえば、東野さんの著書に「変身」という本があってそちらは既に読んだことがあるのですが、この本を買うときに「変身」と「分身」を手に取り間違えてしまい、レジで気付いて買い直すという一騒ぎがありました。レジのお姉さんと後ろに並んでいた爺ちゃんには本当に申し訳ないことをしました...。
次からはちゃんと観てから買います。