- 作者: 佐藤治彦
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2008/03
- メディア: 新書
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チェーン店舗の店長は「現代の奴隷制度」というべき残酷な状況にある。その要因は、本部だけが有益な契約構造と、現場の劣悪な労働環境にあった!コンビニエンスストアの店長は、なぜ本部を相手に裁判を起こしたのか?居酒屋チェーン店の店長が“未払いサービス残業代”を勝ち取った方法とは?大手ファミリーレストランの店長が過労死した理由とは―?チェーン店舗の現場に巣食う“モラルハザード”という病理が家庭崩壊を生み、超低賃金の労働条件が過労自殺を引き起こす!豊富なデータと緻密な取材をもとに検証する、本部と店舗をつなぐ構造的問題と“カネの正体”―。日本の店長を奴隷的環境から解放するための道筋を徹底追究する。
http://www.amazon.jp/dp/4862482317
センセーショナルなタイトルは決して単なる釣りタイトルではなく、名ばかり店長/管理者の実態についての説明が詳細にされている非常に興味深い一冊でした。ただし、コンビニや居酒屋チェーンというあまりに身近過ぎるものが題材とし扱われていることと、その状況の過酷とも言える悲惨さをテーマとしているため、今までそうとは知らずに利用させてもらっていたことに申し訳なさのような気持ちがわいてきました。これを読んでからは、自宅近くのコンビニに行ったときは「この店長、いつも疲れているっぽいけどきっと...」とか「この時間にこんなに在庫があるのに大丈夫?」とか、「バイトこんなに入れちゃって...」とか、頼まれてもいないのに勝手に心配してしまう私は、簡単に本の影響受け過ぎだと思います。でもそうならずにはいられないほど、あまりにひどいフランチャイズ本部の身勝手さには本当に腹が立ちますし、店長でもない私でも読んでてプリプリ怒りたくなりました。
わたしの住んでいる近辺にはコンビニがいくつかあるのですが、いつも気になっていることがありました。
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- 何時に行っても同じ人(店長っぽい人)がレジ担当
- 同じ系列のコンビニがものすごい近距離に集中している
- 商品が売れてる様子も無いのに入れ替わりだけはものすごく早い
これらの疑問は本書ですべて解決したのですが、何だかあまりに悲しい理由ばかりで正直かなり気がめいりました。
自分たちの便利さはこういう販売側の犠牲の上に成り立っているのかと思うと本当に参ります。
話は少々変わりますが、先日「coco壱番屋の店員だけど質問ある?」を読んでいて、ココイチはフランチャイズじゃないというのを初めて知りました。
ちょうどこの本を読んだあとでフランチャイズそのものに対してではなく「フランチャイズで儲けを出そう」ということに対して非常に嫌悪感を覚えていたところだったため、なんとなくココイチに対して好印象を感じました。フランチャイズであることの是非だけではそのもの自体の良し悪しは判断出来ないのでしょうが、それでもこの本からうかがえるフランチャイズという仕組みの気持ち悪さにはそれだけの威力が十分あります。
今現在、コンビニは社会全体のインフラとして非常に重要な位置にあると思っていますが、そこを利用する人だけではなく働く人々も幸せにならなくては決して永続的にインフラとしてあり続けることは難しいのではないでしょうか。
もちろん、こんないびつな形態での契約がこのまま続くとは決して思えませんし、いずれ妥当なところに収まると期待しています*1。
なんて、具体的な根拠の無い希望的観測ですけどね。
気軽にコンビニやマクドナルドが利用しにくくなる一冊でした。
でも読んでよかったです!!