- 作者: 森絵都
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/02/17
- メディア: 文庫
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「私は、“永遠”という響きにめっぽう弱い子供だった。」誕生日会をめぐる小さな事件。黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。ぐれかかった中学時代。バイト料で買った苺のケーキ。こてんぱんにくだけちった高校での初恋…。どこにでもいる普通の少女、紀子。小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー。第一回本屋大賞第四位作品。
http://www.amazon.jp/dp/4087460118
人間は日々成長するし変化しているというのは当たり前のことだけど、それでもその変化を改めて時系列に沿って並べてみると、同じ人間の人生であっても時間の変化でこうも変わるものなのかというおどろきを感じずにはいられません。
小学校という、人間関係のベースが横のつながりで形成されていて濃過ぎてむせかえりそうな人間関係で築かれた世界や、その横よりも強力な縦のつながりが生まれることで一変してしまった中学校という世界。そして無駄に自由な高校時代。各時代の詳細な描写は、わたしの頭の中にある各時代とシンクロしてつよく共感を覚えたし、だからこそそれぞれの時の価値観/考え方の変遷の激しさを目の当たりにしてまいったなーとうなってしまいました。
ひとりの人間の人生だからどこを切ってもきんたろう飴のように同じ自分が出てくるのかと思いきや、全然そんなことはないんだと痛感させられるし、こうやって人は大人になっていくのか...という感慨深さのような感情をもたずにはいられませんでした。
本当に森さんはすごいなと思うのだけど、時代時代の心理描写がものすごくうまくて繰り返し繰り返し読みたくなる表現が多いです。
このあまりの巧妙さに、もしかして森さんはこの本を書いたときに一瞬だけ小学生とか中学生になったんじゃないか、疑ってしまうのも致し方ないとわたしは思うわけで、こういう文章が書けるようになりたいなといつも読むたびに思わされます。