REC


ローカルTV局の若い女性レポーター、アンヘラはカメラマンと共に消防隊の同行取材を行っていた。深夜、老婆の叫び声を聞いたという隣室の住人からの通報を受けて、現場アパートへ駆けつけると、そこはこの世の地獄だった…。本国スペインで社会現象を巻き起こし、ハリウッド・リメイクも決定したリアルパニック・ムービー。

『REC/レック』作品情報 | cinemacafe.net

シアターN渋谷にて。
詰め将棋をしているように徐々に追い詰められていく展開がこわいのなんのって、もう「こわいです><」なんてなまぬるい表現じゃ伝えられないくらい恐ろしくて、最後まで観なくていいから帰りたくなる作品でした。
閉鎖された空間で刻一刻増えていく敵と、それに反して減っていく味方。作品のもつ臨場感があまりに強力過ぎてその場にいるとしか思えない心境で見入ってしまいました。まいったまいった...。
今年一番のキチガイ映画に認定したいほどの作品です*1


ホラー映画で一番大事なことは、日常にありがちなシチュエーションをどれだけ組み込めるのかという点にあると思っていますが、その点については完璧としか言いようのない構成でした。
事件発生のタイミングの日常性。アパートで突如起きた惨劇の異常性。そして偶然その場に居合わせることになった人たちが訳も分からず閉じ込められてしまうという異常性。このバランスのよさはもう芸術的というべき境地に達していて、たぶんこの作品のおもしろさを関数化したとしたら、この構成が極値となるくらいバランスがとれていたように感じました。


もうひとつ、この作品には目玉となる要素があるのですが、それは映像の視点が取材用カメラに固定されている点です。つまり、テレビ局のカメラマンのオウンビューで画面が展開していくために、非常に臨場感あふれる映像が映し出されています。
最近では、クローバーフィールドが似たような手法を使っていましたが、ホラーという題材で考えると10年くらい前に話題になったブレアウィッチプロジェクトが一番イメージとしては近い印象を受けました。現場全体が見えにくい上に視界が制限されることで、見えないことに起因する恐怖もあおれます。暗闇が怖いと感じるように、やはり見えないということは怖いことなんですよね。そんな当たり前のことを当たり前に感心してしまいました。


ここまで書いて思い出したのですが、この作品のもうひとつのすごさは導入部のおだやかさが尋常ではないという点です。
導入部ののどかなインタビューシーンがあまりにほのぼのしていて、観ているこちらも「あれ?これってホラーじゃなかったっけ?」と思ってしまうほどホラーであることを意識させません。もうびっくりするくらいドキュメンタリーを撮っているテレビ局の映像なのです。だからこそその後のパニックになる展開が活きるんだよなあと観終わってから感心したのですが、観ているときはその豹変っぷりに心底打ちのめされました。やさしかった大人に急に暴力を振るわれたような*2、そんなやるせない気分になりましたし、予想のつかないパニックホラー特有の興奮を心から楽しむことが出来ました。


結末がイマイチなのは残念ですが、もうそんなのはどうでもよくなるくらいおもしろい作品でした。
二度と観たくないというのはホラー映画としては最高のほめ言葉だと思っていますが、まさにその言葉をこの映画には送りたいです。


公式サイトはこちら

*1:同じ日に観たBUGという映画があまりに強烈過ぎてさすがにキチガイ映画No1の称号は与えられませんが、トップレベルのホラーであることは間違いありません

*2:そんな経験したことがないので分かりませんが、イメージとしてはそんな感じです