崖の上のポニョ


海辺の小さな町。崖の上の一軒家に住む5歳の少年・宗介(土井洋輝)はある日、クラゲに乗って家出したさかなの子・ポニョ(奈良柚莉愛)と出会う。ポニョは、アタマをジャムの瓶に突っ込んで困っていたところを、宗介に助けてもらったのだ。そんな2人は大の仲良しに。だが、海の住人であるポニョの父・フジモト(所ジョージ)によって、海へと戻されてしまう…。そしてポニョは、“人間になりたい!”という思いから、妹たちの力を借り、父の魔法を盗み出し、再び宗介のいる人間の世界を目指す! 「人間になりたい」と願うさかなの子・ポニョと5才の男の子・宗介の物語。宮崎駿監督が4年ぶりに手がけるスタジオジブリのオリジナル作品。

『崖の上のポニョ』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。ジブリ最新作。
何だかよくわからない生き物のポニョと5歳の少年、宗介の物語。表層だけたどればすごくいい話なんだけど、ある程度分別を持ってみるとそう素直に取るわけにはいかない扱いにくい印象を受ける作品でした。とはいえ、映像のおもしろさやポニョや宗介の無垢な振る舞いに癒されるところは期待どおりの良さも併せ持っていて、満足度はとても高かったです。観て良かったという点については間違いなくそう感じられる作品でした。


とても印象に残っているシーンがあって、それは宗介とリサ(宗介の母)が津波が押し寄せる中、車で家に戻ろうとするシーンなのですが、その車をポニョが津波の上を走りながら追いかけるのです。次々に押し寄せる魚の姿をした波の上を走るポニョ。波の迫力あふれる様相と、ポニョがかわいい姿で猛スピード(走っている車に追いつけるかどうかというくらいの速さ)で走るというミスマッチはとても印象的で見ている方に声など出させない迫力もあわせもっていました。あのシーンだけでも繰り返し観たくなります。
あとはやはりジブリは海辺がある作品がいいよなあというのも感じました。魔女の宅急便紅の豚など、海が近くにある作品はどれも美しいシーンが多くて大好きなのですが、この作品もその例にもれず美し過ぎる海のある風景にやられました。見慣れた風景が水の中に溶け込むというそのモチーフもとてもおもしろし、うまく映像で表現出来ていたと感じました。


それにしても、今日の映画館はポケモンとポニョの公開直後ということもあって、今まで見たこともないような混みっぷりでした。3連休の最後だもんなあ...。
今日は朝一の回(8:30からの回)を見に行ったのですが、珍しくこの時間の回もほぼ満席と大好評のようでした。客層も子どもや子連れだけではなく、カップルや老夫婦も居たりと本当に幅広い客層でした。これだけ幅広い人気を獲得出来るジブリもすごいなと思う一方で、映画でアニメを観ようと思う程度の広い意味でのアニメ好きの多さにも感心してしまいました。


夏休み中はずっと上映していそうですので、そのうちまた観に行きたいなと思いました。
今日はハホ*1を連れて行ったのですが、途中で怖くて泣いてしまいました。たしかにちょっとこわい感じのするシーンだったので何となくその気持ちは分かりますが、泣かれるのはつらいので次は一人で行ってゆっくり観ようと心に決めたのでした。

公式サイトはこちら


以下ネタばれ混みですのでご注意。




実はこの作品を観ていて不覚にも泣いてしまったシーンがありました。
それはポニョが人間になると決まったあとに、フジモト(ポニョのお父さん)が宗介に握手を求めるシーンです。


例えポニョ自身が望んだこととは言え、5歳の少年にわが子の未来を預けることになったフジモトの心境を考えると自分のことのように胸が苦しくなりました。ポニョがもう少し大きくなって多少分別がつくようになればまた別の選択が出来るかもしれない。きっと彼はその別の選択を選んで欲しいと願い、本人にとってもいいことのはずだと信じているのだと思います。私もそう思いますし、ある程度の分別をもって考えれば多くの人はそう考えるはずです。その当たり前をあえて外して、自らの大事な子どもの行く末を同じくらい幼い子どもにゆだねないといけないつらさを考えるだけでとてもこみ上げてくる感情を抑えることは出来ませんでした。


帰り道、このことについてずっと考えていたのですが、この作品ではわざわざ「常識で考えたら絶対にそうしないこと」というものをあえて掲げて見せたのではないかと思うのです。単にいい話にまとめようとしてこうなったのではないというのは、この作品をひととおりみて分かりました。もしいい話にしたかったのであれば、もっといい構成や結末が私でも思いつきますし、そのような安っぽい展開ではこのジブリ作品独特の匂いが出せませんでした。


なぜこの構成になったのかは分かりませんし、直感ですが、きっと私には理解出来ない気がします。
ただひとつ言えるのはフジモトの心境に共感をおぼえてぐっときたというその事実だけです。でもこの共感をおぼえたことで私はこの作品に対する印象が大きく変わったし、とても好きな作品になりました。今はそれだけで十分ということにしておきます。


帰り道、ハホに感想を聞いたら「ポニョと宗介が仲良くなって、ポニョが人間になって面白かった」と言ってました。ストーリーを追うだけで精一杯のハホも楽しめたというのはすごいなと感じます。何だか嬉しくて、ハホと二人で主題歌を大声で歌いながら帰ってきました。


間口の広さと奥深さの同居した、そして観る人によってその印象を変えるカメレオンのような多彩さをもつ作品。
今年の夏の思い出として記憶に残りそうです。

*1:長女