実は悲惨な公務員

実は悲惨な公務員 (光文社新書)

実は悲惨な公務員 (光文社新書)

税金を無駄に使っているとか身分が保証されているから民間とは感覚が違うのだとか、テレビや雑誌などバッシングされることの多い公務員ですが果たして本当にそれは実態と一致するのでしょうか?
マスコミ経由で報道される公務員はいつも悪事を働いたり、無駄を生み出したりしているわけですが、一方が私の知っている公務員*1の人たちはまじめな人ばかりで、報道を通して受ける公務員像とはかけはなれていて報道される内容にいつも違和感を覚えていました。


悪者をこれだと決めつけることで、構図というか対立軸を明確/簡単にしようという考え方は、すごく安直だけどとても分かりやすくて共感を得るためには効果的です。
分かりやすいことが悪いとは言いませんが、悪意をもって構造を簡易化して分かりやすいように見せているだけで、本質的じゃない事をあたかも問題の核であるように見せていることはとても不愉快です。
そしてその矛先によく上げられている公務員というのは立場は決して強くはありません。本来は公務員も国民/市民であるわけですから区別するのもおかしいのですが、公務員でないということで生じる立場的な優位性をたてにして、仮想的である公務員を叩くことは非常に納得できないのです。


そういった現状だからこそ、この本はとても大事な本だと思います。
公務員の実態をしっかりとあるがままに伝えているので、実は楽をしているわけではなくて民間同様とても大変だというのも理解出来ます。
また、福祉や住民サービスを経済側の視点だけから最適化することはナンセンスだというのも、自分がサービスを受ける側になって考えてみれば当然理解できます。そもそもサービスが足りないと非難する側の人間の多くは想像力が足りないのです。
お客様意識ばかりが強い人間が、税金を払っているからと言って過剰にサービスを要求するケースが紹介されていましたが、このように対価やコスト意識のかけらも持ち合わせていない人間が「民間じゃこのくらいのサービスは当たり前だ」と表向きの事例ばかりを比較して、余計なコストをかけさせているのです。で、こういう相手への対応に無駄なコストがかかってしまうために全体としてのサービス低下を引き起こすことになるのです。ホントバカみたいな話です。


叩かれている側を擁護するという意図があったのかどうかわかりませんが、本書は比較的公務員側からの視点が多かったです。
公務員びいきと思う人も多いかも知れませんが、こういったご時勢を考えればよいさじ加減だったと思います。日ごろから公務員への風当たりの強さが気に食わなかった身としてはとても同意できる部分が多かったです。

*1:例えば昔からの友達であったりネットで知り合った友達なのですが