死神の精度

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

グラスホッパーに続く、「伊坂幸太郎作品を読んでみようシリーズ」第二弾は死神の精度。先日映画化されたばかりなので、どこの本屋でもポップ立てて売り出し中といった様子でして、その勢いに押されるように手にとって見ました。映画の方は金城さん演じる死神の雰囲気がすごくよくてとても気に入ったのですが、それでも原作の方がかなり面白いのではないかと感じました。(映画の感想はこちら)
映画を観た後なので、「次はこうなるんだよな...」と思ってしまうシーンも結構あったのですが、半分(全6話のうち3話は映画では出てこないのです)は未見のストーリーでしたし、何より結末が映画と違ったのが予想外でした。


映画の方を見たときにも感じたのですが、死神が「実行」か「見送り」かという判断をするその基準は非常に曖昧でよく分かりません。千葉(死神の名前)は必ず相手の死生観についての質問をするのですが、その内容が判断基準になっているわけでもなさそうだし、やり残したことがあろうが非常にいい人であろうが、実行するというのが既定値なのです。でも時には見送りにするケースも無いわけではなくて、その基準がすごく理解出来なかったのです。


でも逆に考えれば、誰から見ても納得出来る絶対的な判断基準なんていうものはなくて、一週間付き合っていく中で千葉から見て「死なせるべきではない」と思わせる何かがあったかどうか。それだけが生死を決める判断基準なのです。
死神は死を司るおそろしい存在ではなく、こんな人間味を感じさせる死神は初めてみましたし、そのギャップというか違和感がすごく面白いと感じた作品でした。