伊坂幸太郎さんの本をひととおり読み直してみた


チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)


今年の3月末から伊坂幸太郎さんの作品をひととおり読み直してみました。


きっかけは、このエントリーを読んで「終末のフール」を再読したらすごいおもしろかったので「ひさしぶりに伊坂さんの本をまとめて読んでみよう」と思い立ったことだったのですが、それから2か月ちょっとかけて14冊の本を読みました。


(読んだ本の一覧)

No タイトル 読了日
1 終末のフール 2014年3月31日
2 砂漠 2014年4月5日
3 オー!ファーザー 2014年4月12日
4 死神の精度 2014年4月12日
5 魔王 2014年4月18日
6 モダンタイムス(上) 2014年4月19日
7 モダンタイムス(下) 2014年4月26日
8 グラスホッパー 2014年5月9日
9 マリアビートル 2014年5月15日
10 チルドレン 2014年5月18日
11 ラッシュライフ 2014年5月29日
12 重力ピエロ 2014年5月31日
13 オーデュボンの祈り 2014年6月8日
14 フィッシュストーリー 2014年6月10日


これ以外に伊坂さんの作品はたくさん出版されているのですが、手元にあるものがこれだけだったのでとりあえずこれだけ読みました*1

伊坂さんの本は前から大好きでよく読んでいたのですが、そういえばいつから読み始めたんだっけ?と思い返してみると2008年に映画の「死神の精度」を観てその物語のおもしろさに感動してからでした。その前年の2007年に「アヒルと鴨のコインロッカー」を観ていてこちらもかなり気に入っていたのですが、そのときはあまりに映画の出来がよかったためにむしろ原作は読まないことにしていました。

原作を読んだらなんとなくあの映画を観て感動した気持ちが薄れちゃうような気がしたんですよね。
もちろんいまだにそんな気持ちをいただき続けているわけではないのですが、「アヒルと鴨のコインロッカー」の原作はまだ読んでいません。


そんなわけで「死神の精度」始まり、たくさんの本を読んできましたが、伊坂さんの作品は基本的に続き物ではないため*2に今回みたいにまとめて通読したことはありませんでした。今回初めてこうやってまとめて読んでみて気付いたのは、伊坂さんの作品は物語としてのつながりはなくとも登場人物のつながりがあちこちに存在するということです。

いずれの登場人物もすごく前面に出てくるわけではないのですが、読んでいると「あれ?ここに出てくる人ってもしかして...」と気付くところがいくつもあって、たくさんの作品を読んでいる人ほどそういう「お!」といううれしい瞬間を味わえるようになっています。これが地味に楽しいんですよねー。

そしてそんなふうに登場人物同士のつながりが見えてくると、自然と作品の世界はとてもゆるくリンクしていることに気付きます。
さっきは伊坂さんの作品は基本的にシリーズ化されていないと書きましたが、明確に続編として描かれていなくても登場人物のつながりが作品の世界をつなげてくれるのです。

作品同士のゆるやかなつながりを見つけること、感じることがとてもおもしろくてもっともっと伊坂さんの作品を読みたくなります。そんな不思議な魅力が伊坂さんの作品にはありますし、とくに物語の舞台がたいてい仙台なので仙台に思い入れのある人にはその魅力がよけい感じられるのです。


シリーズをまとめ読みすることはよくしていましたが、著者でまとめ読みってしたことがなかったのですがわりとおもしろい試みだし、他の著者についてもまとめ読みしてみようかなと思うくらい伊坂さんの作品のまとめ読みは楽しかったです。


最後に伊坂さんの本の中でとくに好きな本を紹介します。

砂漠

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決…。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれ成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。

http://www.amazon.co.jp/dp/4101250251


大学に入って出会った5人の男女が卒業までに体験するたくさんの出来事を描いた作品。
これ本当におもしろくてもう何度も読み直したくらい大好きな作品です。


モダン・タイムス(上/下)

恐妻家のシステムエンジニア渡辺拓海が請け負った仕事は、ある出会い系サイトの仕様変更だった。けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。

http://www.amazon.co.jp/dp/4062770784/

5年前の惨事―播磨崎中学校銃乱射事件。奇跡の英雄・永嶋丈は、いまや国会議員として権力を手中にしていた。謎めいた検索ワードは、あの事件の真相を探れと仄めかしているのか?追手はすぐそこまで…大きなシステムに覆われた社会で、幸せを掴むには―問いかけと愉しさの詰まった傑作エンターテイメント。

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いまや当たり前のように使われているインターネットの検索。
現代ではだれもがみな自身の外部記憶装置としてインターネットを使っているのですが、そこに依存し過ぎることの怖さを嫌というほど思い知らされました。タダほど怖いものはないというのは、まさにインターネットのためにある言葉のような気がしています。


グラスホッパー


「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに―「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。

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個性豊かな殺し屋がたくさん出てくるなんとも言いがたい不思議な作品。
どの殺し屋もすごく魅力的なんですが、さすがに殺し屋メインの物語なだけあってそんな魅力ある殺し屋たちがどんどん死んでしまいます。この人は死なないで欲しいなあ...と思って読んでいくとまず死んじゃうのがとてもさみしく感じられました。

ちなみに続編というか、この物語のあとの世界を描いた「マリアビートル」もおもしろいのでおすすめです。


マリアビートル (角川文庫)

マリアビートル (角川文庫)

*1:と言いつつ、実は「フィッシュ・ストーリー」だけは新たに買って読みました

*2:一部関連性のある作品はありますが