「蛍川・泥の河」読んだよ

蛍川・泥の河 (新潮文庫)

蛍川・泥の河 (新潮文庫)

戦争の傷跡を残す大阪で、河の畔に住む少年と廓舟に暮らす姉弟との短い交友を描く太宰治賞受賞作「泥の河」。ようやく雪雲のはれる北陸富山の春から夏への季節の移ろいのなかに、落魄した父の死、友の事故、淡い初恋を描き、蛍の大群のあやなす妖光に生死を超えた命の輝きをみる芥川賞受賞作「蛍川」。幼年期と思春期のふたつの視線で、二筋の川面に映る人の世の哀歓をとらえた名作。

https://www.amazon.co.jp/dp/4101307091

宮本輝さんの代表作ということで、もちろん作品の名前は知っていましたが実は読んだことがありませんでした。毎年「流転の海」シリーズは繰り返し通読しているのに、そのほかの作品はほとんど読んだことがなかったりします。一つの作品を気に入ったら同じ著者の本を根こそぎ読み漁るわたしにしては珍しく、宮本輝さんの本は「流転の海」シリーズ以外はあまり興味がありませんでした。

理由はたぶん何にもなくて、とにかく「流転の海」があまりに好きすぎて他の作品を読んで幻滅したくないというだけだと思うのですが、今回何となくその気になったのでこの「蛍川・泥の河」を読んでみました。

本書を読み始めてすぐに「これはもっと早く読めばよかった」とめちゃくちゃ反省しました。
その理由はこの作品がすごいおもしろかったからというのありますが、それ以前にこの2作品が「流転の海」シリーズの原点であるということがわかったからです。


大阪の川沿いで商売を営む家族と船を家替わりにしているある一家の交流を描いた「泥の河」も、北陸の季節を丁寧に描いた「蛍川」もどちらも「流転の海」のある時期ととてもよく似たシチュエーションが描かれています。出てくる人も家族構成も似ていて、明らかにこれらをもとに「流転の海」の世界が作り上げられていることが読み取れます。

今回これを読んだことで「流転の海」が今後どうなっていくのかというところが少し見えてきたような気がして早く続きが読みたくなりました


(関連リンク)