歌っていいと言われてもみんなわりと歌えないもんですよというお話


長女と初めていっしょに映画を観に行ったのはいまは無き第一東宝です。


観たのは「ドラえもん のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜」だったのですが、街の中心部という立地+公開初日にも関わらずわたしたち以外は5人くらいしか観ている人がいなくて寂しかったことをおぼえています。観たときは「ドラえもんってもう人気ないのかなあ」なんて思っていたのですが、いま思えば人気が無かったのは映画ではなく映画館の方だったようでして、じっさい映画を観た9か月後に映画館は閉館してしまいました。


で。その翌年のドラえもんはちょっと離れたシネコンに観に行くことにしたのですが、そちらはすごい混みっぷりでしてたいへんおどろいたのですが、もっとおどろいたのはオープニングで歌い出す子がたくさんいたことです。前年観た映画館では子どもがほとんどいなかったので歌声なんて聴こえてこなかったので、これにはおどろきましたしすごくたのしかったです。映画はつまんなかったけど...。

通常、映画館で映画を観るときは声を出して他の人の鑑賞を妨げないことがマナーであるとされていますが、子どもが観る映画については「みんな好きに歌ってOK!」みたいな空気になることが多いです。そもそもドラえもんなんてのは子どもたちのための映画なわけですから子どもたちが一番楽しく観られる環境であった方がいいのは当然ですし、歌えた方が楽しいと思う子どもが多いのであればそれが許容される環境であるべきだとわたしは思います。


ただし大人の場合はこうはいかないというか、大人に対してはいくら歌いたいから言っても好きに歌っていいよとは誰も言いません。

大人だったらNGで子どもだったらOKというのもよくわからない理屈ですが、でもどう考えても素人の歌声なんて聴きたくないですよね。

たとえば「アナと雪の女王」のCMで「Let it go」をみんなが手を上げながら歌うバージョンがありますが、実際にあんなことされたらかなりイライラします。あのシーンは、イディナ・メンゼル松たか子ののびやかな歌声だからこそ盛り上がるわけで、横にいるまったく知らん人の歌声がそれに混じったらそれはもう全力でがっかりします。


そんなわけで、どんなにいい楽曲の映画があったとしても基本的に大人は映画館で歌えません。歌ってもいいけどたぶん叱られます。
わたしも隣の人がいきなり歌い出したらやめてくださいとお願いしますし、もしその人が怖い人で逆に怒られたら泣いて席を移動します。


じゃあ映画館で堂々と歌を歌うことはできないのか?というと、じつは絶対歌えないわけではなく歌えることもあります。それは「歌っていいよバージョン」が上映されたときです。


「歌っていいよバージョン」というのはわたしが勝手に命名した名前なのですが、楽曲がすごくよくて歌いたい人が続出!という作品については公式に「この回は歌っていいですよ」という告知がされることがあるのです。最近だと上で挙げた「アナと雪の女王」なんかも短期間ですがやっているのですが、この件でちょっとしたニュースが出ていました。

29日に放送されたラジオ番組「爆笑問題カーボーイ」で、太田光が現在大ヒット中のディズニーアニメ映画「アナと雪の女王」について語り、劇場で歌う女性に対して嫌悪感を爆発させた。同映画の主題歌「Let it Go」を劇場で歌える特別上映が26日から、全国85か所でスタートしていた。

 同番組では田中裕二が「歌がスゴいもんね。ヒットしちゃって」と語ると、太田は「アレを劇場でみんなで歌うという、気持ち悪い。本当に気持ち悪いことやってますよ」と暴露。田中は「すごいよね!! みんな歌うんでしょ!?」と驚きを見せる中、太田はアメリカ人が参加することは元々文化が根付いているから問題ないと説明した上で「日本にはあんまりそういうの根付かないんじゃないかって思ったら、意外とやってるみたいね。気持ち悪くなっちゃったね。日本人」と持論を展開。さらに「変な不細工な女が、松たか子の歌、歌っちゃってさ。『ありの〜ままの〜♪』なんて言っちゃってさ、お前ありのままじゃダメだろ! ブスと雪の女王」と毒舌を発揮した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140430-00000009-reallive-ent


この記事を読んで思ったのは「いくら率直な意見だったとしても品が無い」ということと、「実際に歌っている様子を観たわけじゃないのによくここまで言えるよね」という2点でした。とくに後者がよくないというか、見てもないことをイメージをふくらませて想像で叩くって相当ダメなパターンじゃないかなと。

というか「アナと雪の女王」のメインターゲットは女性かもしれませんが、この作品のことが好きなのは女性ばかりじゃないし男が「みんなで歌おう」の回を観に行くことだって当然あるわけじゃないですか。なんで女限定+不細工前提なのかさっぱりわからないし、自分が嫌いなモノが好きな人のことを貶したいだけにしか思えないんですよね。


いまやっているアナと雪の女王の「みんなで歌おうバージョン」は日本語歌詞なので「聴きたくない >>(超えられない壁)>> 歌いたい」という状態であり、つまり行こうとまでは思わないのですが、もし英語歌詞だったら「歌いたい >>> 聴きたくない」に逆転します。

「For the first time in forever」歌いたい!



ここでひとつ告白したいというか、上ではえらそうに「映画館で素人の歌なんて聴きたくないよ!」なんて書いちゃいましたが、じつは以前「映画を観ながらみんなで歌おう」という企画にのっかって映画を観に行ったことがあるんです。そのときのことはこちらに書いたのですが、いまから5年前に「マンマ・ミーア!−英語歌詩字幕付きヴァージョン−」というのを観に行きました。

マンマ・ミーア!

マンマ・ミーア!


有名な作品なので見たことがある方も多いと思いますが、母親と二人で島で暮らしていた女性が父親と思われる男性3人に「お父さんとしてバージンロードをいっしょに歩いて欲しい」という手紙を送りつけて結婚式に呼び出すんだけど...というお話でして、コメディとシリアスをいったりきたりする展開の合間をABBAの歌が埋める的な感じで物語はすすんでいきます。

この作品は映画好きにはわりと評判がよろしくないのですが、わたしはすごく大好きで映画館で合計3回観るくらい気に入ったのですが、そのうち一回が「歌えるバージョン」だったわけです。

映画館で歌うなんてのはそれまで経験がなかったので*1、行く前は「わざわざ歌える回を見に来るくらいなんだからきっと歌う気満々なんだろうなー」なんて思っていたのですが、いざ上映が始まっても誰ひとり歌う人はいませんでした...。

というか人がほとんどいなくて(たしか10人くらい)みんな席がバラバラだったのでもしかしたらみんな小声で歌っていたのかも知れませんが、耳をすましても歌声は聴こえてきませんでした。わたしもちょっと恥ずかしくなってしまって軽く鼻歌を歌うのが精いっぱいでして、「なんでわざわざこんな回を見に来てしまったんだ...」と後悔でいっぱいになりました。


結局、観ながら歌ってもいいよと言われても周囲が歌わないとなんとなく歌いにくいし、逆に他の人のことなんかお構いなしで本気で歌っている人がいたらそれはそれで歌いにくいんじゃないかなと思うと、こういうイベントを存分に楽しめる人ってじつはあまりいないんじゃないかなと思います。



何だか何を書きたかったのか分からなくなってきましたが、「マンマ・ミーア」のアマンダ・セイフライドはかわいいし歌もうまいのでおすすめですよ!ということだけはぜひご理解いただけるとうれしいです。



(参考サイト)

*1:結局、その後は一度も行っていないのでこれが最初で最後の経験でしたが