LINEが流行っているらしいというのはネットではわりと前から話題になっていました。
ですが、わたし自身は既にtwitterやFacebookといったサービスを使っていてそれでやりたいことがすべて事足りていたし、アドレス帳を介してユーザー同士がつながるというのも個人的にはあまりうれしくないと思っていたので、むしろ使うことを敬遠してさえいました。「ネットとリアルは別々」という使い方が長かったために、いまさら知人とネットでつながりたいとは思わないなというのが率直な気持ちだったのです。
そもそも、無料通話が欲しいと思うほど普段から電話機能を使っているわけでもなく*1、さらに携帯メールもすでにまったく使わなくなっていたので機能的な魅力を感じなかったというのも大きかったです。そんなわけで当初から「このサービスのターゲットは自分みたいなユーザーじゃない」ということははっきりと感じていました。
そんなわけで乗り換えるどころか、ためしに使ってみようという気持ちさえ微塵もわかなかったLINEですが、その状態に追い打ちをかけたのがネットでLINEへの問題提起や実際に起きた問題の数々を見かけたことでした。
いろいろと取りざたされるたびにいい話はひとつもなく、サービスに対する率直な感想としては「なんか信用ならないサービスだな」と思っていました。
さんざん書いてしまいましたが、そんなあまりいい印象のないLINEですが、今年の春先くらいには国内で3000万人を超えるユーザーを獲得しています。
むかしmixiが1000万人を超えたのがすごい!とさわがれていたことを思えば、3000万人というのはとんでもないユーザー数です。
しかも調べてみると他のSNSが3000万人のユーザーを獲得するまでにかかった時間の半分以下の日数でそのユーザーを獲得しているそうでしてその勢いはとてもまともとは思えません。その勢いとネットでの評判とのかい離におどろかされたのと同時に、わずか一年ちょっとで日本の4人に1人という数のユーザーを得るにいたったその経緯にはいたく興味がありました。
ただ、LINEが爆発的な人気を得た経緯についてまとまった情報というのがなかったのでながらく、その疑問は疑問のまま放置されていたのですが、先日「LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?」という本が出るということを知り、さっそく読んでみました、というのが本エントリーの前置きです。いつもながら前置き超長くてすいません。

LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? (マイナビ新書)
- 作者: コグレマサト,まつもとあつし
- 出版社/メーカー: マイナビ
- 発売日: 2012/11/27
- メディア: 新書
- 購入: 5人 クリック: 304回
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若者を中心に人気急上昇中のスマートフォンアプリ「LINE」。ユーザー数の急増、国内外での人気などが話題になるものの、その実態はユーザー以外には、まだまだ謎に包まれている。本書ではLINEブームを分析し、そこから見えてくる新しいインターネットの姿やその活用術、そしてそこにひそむ課題も解説する。
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本書はブロガーのコグレさんとジャーナリストのまつもとさんの共著となっており、それぞれの著者の視点からLINEの実態がまとめられていてたいへんおもしろかったです。
コグレさんは「LINEはどのようなサービスなのか?」「どのような層が使っていてどのくらいのアクティブユーザーがいるのか?」といった実態分析に始まり、「どういった広まり方をしたのか?」という当初わたしが気になっていた部分についても触れていています。
中でも「アーリーアダプタがいない流行」という表現はすごくしっくりきたし、このように有益な情報をたくさん収集した上でわかりやすくまとめていてとても参考になりました。
また、まつもとさんが書かれている部分はもう少しサービスの設計思想や企画、そしてビジネスインパクトの大きさという部分に触れていてこれがまたとてもおもしろいのです。LINEがtwitterやfacebookのようなオープンなつながりを積極的に求めていないサービスとして設計されているということを理解すれば、なぜアドレス帳を使ったつながりにしたのか?とか、そもそもこのサービスがターゲットにしているユーザーはどういった層なのかというところが自然と見えてきます。
さらに通話やSMS/携帯メールを有料サービスとしていた通信キャリアのサービスを横取りしてしまったことが、キャリアの立ち位置を大きく変えかねない可能性*2をより現実的なものにしたことを知って、そのビジネスインパクトの大きさをあらためて思い知りました。
あるネットサービスに限らず、なにかを分析するさいにはこういった複数人の視点から多角的に切ってみるのはとても有効的だなと思ったし、そういえばこういうふうに書かれた本って読んだの初めてかも知れないなとも思いました。
いい意味でも悪い意味でもLINEに興味がある人は一読の価値がある一冊だと思います。
*1:Galaxy Tabに機種変更してからは携帯電話の電話機能はほぼゼロになりました
*2:つまりただの土管屋にならざるを得ない状況になる可能性