日本最北の地である利尻島・礼文島。20年前に一人の女性教師と生徒6人の間に起こった“ある転落事故”を軸に、双方の思いが複雑に絡み合いながら、当時明かされることのなかった謎と真実が、一つの衝撃的な結末を導き出す――。東映が創立60周年記念作品として製作され、主演を吉永小百合が務めることに。原作は「告白」(双葉社刊)の湊かなえ。
『北のカナリアたち』作品情報 | cinemacafe.net
宇都宮ヒカリ座で観てきました。
原作「往復書簡」は既読でわりと好きな作品でしたので、その映像化作品である本作もすごく楽しみにしていました。
観た感想としては原作の骨格をベースにしてはいるもののストーリーには大きく手を加えていて、個人的にはその変更があまり気に入りませんでした。映像から伝わってくる北国特有の雰囲気や閉塞感で満たされている独特の空気はすごくよかったですし、作りの雑さが多少目に付いたものの、映像はわりと好きだなと感じる部分が多かったです。
ただ、やはりストーリーの変更がすごく気になるので原作好きとしては「原作にはやや見劣りする」と言わざるをえないのですが、原作から切り離してひとつの映画として観るとそれはそれできっちりと楽しめる作品でした。すごい好き!というほど気に入ることはありませんが、悪い作品ではけっしてないと思います。
本作でよかったなと感じたのは、子どもたちの振る舞いがしっかりとそれらしく映し出されていてそこにすごくリアリティが感じられたことです。この作品で描かれている子どもたちが作るコミュニティというのは、自分が子どもの頃に所属していたそれとすごく似ているように感じられて、その「あるある感」っていうんでしょうかね、細部に共感をおぼえる部分がいくつかあってそこはとてもよかったと感じました。
あとは大人になって昔の友だちとすごくひさしぶりに会うときの、なんとも言えないくすぐったさみたいな感覚もよかったです。
繰り返しになってしまいますが、原作を意識しなければすごくいい作品なのかもしれないなと思ったし、そういう意味では原作を読んでいたことがかえってあだになってしまっていたように感じました。
子どものころや幼いころは、いろんなことが何にも分かっていなかったし、そもそも何がわかっていないのかもぜんぜんわかっていませんでした。経験もなければ知恵もないというそんな状況だった子どもにとって、目の前にあることだけが自分にとっての世界のすべてになってしまうのはやむを得ないことだと思います。
けれど、子どもにとってはそれがやむを得ないことだったのかも分からないんですよね。だからいつまでも過去を忘れられないし、捨て去ることもできなくて、そこにこだわってしまったりするのです。
そんな子どものころのことを思い出してしまうような作品でした。
もうちょっとうまくまとまったらすごくおもしろかったかも知れないと思うと、ちょっと残念だなあ。
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