浩市(佐藤健)と淳美(綾瀬はるか)は、幼馴染の恋人同士。しかし1年前、淳美は自ら命を絶とうとして昏睡状態に陥る。浩市は、昏睡状態の患者と意思疎通のできる脳神経外科医療の一種“センシング”によって、彼女の自殺未遂の理由を探り、淳美を昏睡状態から目覚めさせようと試みる。淳美の潜在意識に潜入した浩市は、淳美から「昔、私が描いた首長竜の絵を探してほしい」と頼まれるのだが…。
『リアル〜完全なる首長竜の日〜』作品情報 | cinemacafe.net
TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。
原作既読で鑑賞しましたが、ベースとなる設定とアイディアは原作から抽出されていたものの、物語の大部分は原作とは異なるテイストで描かれているという印象を受けました。具体的には登場人物の属性は変わっていたし、物語の構造にもいろいろと手が入っていました。
原作・映画それぞれによいところはありましたが、作品としての出来のよさやおもしろさは原作の方に軍配があがりますが、ひとつの作品としてのまとまりのよさは映画の方が圧倒的によかったです。
本作は「センシングと呼ばれる技術を使ってこん睡状態にある人とコミュニケーションを取ることができる世界」を舞台にしており、雰囲気としては近未来ないしは現代のパラレルワールドといった印象を受けました。SFとまではいかないのですが、現実と区別しにくい程度の近未来(もしくはパラレルワールド)という設定はすごくわたし好みです。
さらに、こん睡状態におちいってしまい通常ではコミュニケーションを取ることすらままならないひととコンタクトを取るために使われるセンシングという技術の存在もひじょうに魅力的です。「好きな人の夢の中に潜入してみたい!」という、あまり大きな声では言えないようなよこしまな願望をもつ私には夢のような技術なんですよね。
そういった原作のエッセンスは踏襲していて、かつ、映像化の難しそうなこの作品を見事に映像として見せてくれたところは非常によかったと思うし、原作のユニークなエッセンスをベースにここまで完成度の高い物語を再生成して見せてくれたこと、そしてその物語のおもしろさにはいたく感心しました。
ただ、原作の「センシングでつながれた他者の潜在意識下の世界」と「現実世界」の境目がどんどんと無くなっていき、その境界線がじょじょに溶けていって曖昧になって行く様子が感じられてその何とも言いがたい感覚が私はすごく好きだったので、あくまで現実と潜在意識下の世界ははっきりと分かれていた中で物語が描かれていた映画にはやや物足りなさをおぼえてしまいました。
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