「正義のミカタ」読んだよ

正義のミカタ I'm a loser (集英社文庫)

正義のミカタ I'm a loser (集英社文庫)

僕、蓮見亮太18歳。高校時代まで筋金入りのいじめられっ子。一念発起して大学を受験し、やっと通称スカ大に合格。晴れてキャンパスライフを満喫できるはずが、いじめの主犯まで入学していた。ひょんなことから「正義の味方研究部」に入部。僕は、元いじめられっ子のプライドに賭けて、事件に関わっていく。かっこ悪くたっていい、自分らしく生きたい。そう願う、すべての人に贈る傑作青春小説。

http://www.amazon.co.jp/dp/4087465764

偶然というか何というか、この本を読んだ日にバルト9で「ダークナイト」を観たのですが、どちらも「正義とは何なのか?」ということを題材にした作品でして、特別意識したわけではないのですが結果として一日中正義について考えながら過ごすことになりました。


正義について書きたかったことは「ダークナイト」の感想であらかた書いたので気は済んでいるのですが、この「正義のミカタ」という本を読んで改めて思うのは「正義の反対は悪ではない」ということです。どこで聞いたのか覚えてないのですが、「正義と対立するのは別の正義」だというのはまさにそのとおりでして、絶対的な正しさなんてないんだということを嫌というほど思い知らされるのです。あるのは自分にとっての正しさが何なのかということであり、その正義を貫く気概があるかどうかということだけなのだということ。ただそれだけなんですよね...。


当初は崇高な理念をもって立ち上げられた「正義の味方研究部」も、いつしか研究部の存在を盾にして正義を振りかざすだけの存在になっていることからも、結局は絶対的な正義などないのだということが伝わってくるんですよね。
もちろん、そういった正義感から出た行動によって助けられる人もいるでしょうし、そのことに感謝の意を示す人が多くいることはまぎれもない事実なわけですが、でもだからといってその正義が絶対的なものでは当然ないし、もっと言うと、その正義が本当に自分の中にある正義と同じかどうかと考えてみるともしかするとどこか一線を画すまったく別のものなのかも知れないのです。


本当に大事なのは、そういった世間的に正しいと言われている「正義」をただ信じるのではなく、自分自身が信じられる正義を見つけてそれを貫くことがとにかく大事なんだよなというのが本書を読んで感じたことです。かっこ悪くてもいいし失敗してもいいから、正しさの判断は決して他人にゆだねないことを心に刻んでおこうと思います。


あと正義だなんだということだけではなくて、大学に入って徐々に新しい生活になじんでいく描写がすごくよくて、青春ものとしても非常に優れた作品だったことも書き記しておこうと思います。


感想を書くために2回目を読みましたが、1回目以上に楽しく読めました。この本も、毎年夏に読む本リストに加えられそうなくらいの傑作。

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