- 作者: 唯川恵
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/10/20
- メディア: 文庫
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欲しいものは欲しい、結婚3回目、自称鮫科の女「るり子」。仕事も恋にものめりこめないクールな理屈屋「萌」。性格も考え方も正反対だけど二人は親友同士、幼なじみの27歳。この対照的な二人が恋と友情を通してそれぞれに模索する“幸せ”のかたちとは―。女の本音と日常をリアルに写して痛快、貪欲にひたむきに生きる姿が爽快。圧倒的な共感を集めた直木賞受賞作。
http://www.amazon.co.jp/dp/4087477444
出だしはまるで短編小説のような、言い換えれば話をふくらませることがとても難しそうな立ち上がりだという印象を受けましたが、あれよあれよという間に物語が積み上げられていって、気付けば何の問題もなく300ページ以上の作品としてしっかりとまとまってしまいました。
ちょっと個性が強い女性二人を主軸に描かれる物語は男性目線で読むとあまり受け入れやすい話とは言えませんし正直「こういう人は苦手だなあ...」と感じる部分がほとんどでしたが、価値観がかなり異なる他人との接し方やその相手を受け入れる覚悟について興味深い示唆を含む作品でした。
人は何のために生きるのか?ということは誰でも一度は考えたことのあるテーマだと思います。
いろいろと答えはあるのでしょうが、わたしは「幸せになるため」に人は生きているのだと思っています。その人がその人なりの満足を得て、満ち足りた気分を味わうために人は生きているのだと思うのです。
そして、この作品を読んで感じたのは「他人とのかかわりの中でしか幸せを見つけられない人もいる」ということです。最たる例を挙げると、おせっかいな人というのはこういうタイプの人でして積極的に他人にかかわってその人から感謝されたりすることで幸せを得るタイプの人です。「その人のために何かをする」という行為は決してその相手のためではなく、結果としてその人が満足感を得るための、つまりは自分のための行為だということを改めて実感し、そしてその難儀さというかめんどくささに思いをはせてため息をつきたくなったのです。
でも、いまのわたしはたしかに自分自身で完結するような「幸せ」しか分からないけれど、でも年老いて価値観が変わっていけば、いつの日か自分自身の幸せだけを追求し続けたるり子が他人との関わり合いで生まれる幸せに価値を見出したように変わることは否定できないんですよね。そのことがとても怖かったし、でもおもしろいなと感じました。
力強くて温かい作品でした。