- 作者: 黒野伸一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/10/06
- メディア: 文庫
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「あなたがお隣に引っ越してきてから、わたしの人生はまた乙女時代に戻ったかのような活況を取り戻しました」竹内京子、二十歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、就職を機に引っ越した先で、変わり者のおばあさん、杉田万寿子に出逢った。万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通じて、意外にも二人の間に、友情ともいうべき感情が流れ始めるのだった。半世紀の年齢差を超えた友情が、互いの人生に影響を与えていく様を温かな筆致で描く感涙の物語。
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出会いは最悪...でも...という展開はどうやら恋愛モノに限った演出ではないようで、本作では女性同士の友情をこのテンプレートに則って描いています。20歳の女性と、彼女が引っ越した先にいたお婆ちゃんの最悪の出会い、そしてそのお婆ちゃんからの意味不明な嫌がらせを乗り越えて培われたかけがえのない友人関係というのは、「たしかにこういう年齢の離れた者同士の付き合いもいいよなー」と思うに値するものでしたし物語としても面白かったのですが、全体的にわたしの嗜好とはマッチングしていないように感じられたしい読後感もあまりよろしくありませんでした。
わたしがそう感じてしまった理由としては、女性同士の友情というものがあまりピンとこなかったのと、後半の展開に対する不快感が大きかったです。こうやって文章に書いてみてわかるのは、この2点の理由のいずれについても、わたし自身がもっている偏見や今抱えている不安が反映された結果であり、作品自体の良し悪しというよりもわたしがこの作品を受け入れる下地ができていなかったことが原因だと言えるのではないかということです。
例えば女性同士の友情に対する不信感というのは、女性同士の友情なんて信じるに値しないと思い込んでいるふしがあってまさにわたしの偏見が露呈されてしまっていますし、後半の展開については親や家族の介護に対する漠然とした不安がわたしにはあったためにそこをくすぐられたことによる不快感だと感じています。
本書の物語としてのよさとはちゃんと理解出来ていると思っていますし、実際に面白いとも思ったのですが、でも読み手の置かれている状況次第で素直に「おもしろい」と言えなくなってしまったわけでそれはとてももったいなかったです。
この本はもう少し歳を重ねたら読み直してみようかなと思ってます。