「薔薇の名前」見たよ

薔薇の名前 特別版 [DVD]

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セブン・イヤーズ・イン・チベット』のジャン=ジャック・アノー監督によるサスペンス史劇。宗教裁判激化の中世を舞台に、イギリスの修道士・ウィリアムと見習いのアドソのふたりが、不審な死を遂げた若い修道士の死の真相究明に乗り出す。

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TOHOシネマズ宇都宮にて。午前十時の映画祭にて鑑賞(8本目)。


わたしは苦手な言葉がたくさんあるのですが、そのひとつに正義という言葉があります。
もちろん読み方はまさよしではなく、せいぎです。わたしの嫌いな人の名前ではありません。
ただ、正義という言葉それ自体はが苦手なわけではなく、子どもが「正義の味方」を応援したりすることや正義という概念自体は好ましいものと思っています。
わたしが不愉快だと感じるのは、正義という言葉が何かを正当化する理由として振りかざされることです。自分の考えや行動に異を唱える人に対して自らを正当化するために振りかざされる正義というのはとにかく気持ちが悪くて仕方がありません。
本作は信仰を異とする人々が自らの正義をたてに争う物語であり、緊張感あふれる展開はサスペンスとして見れば非常におもしろい作品です。ただ、わたしは宗教やそれに付随した争いというのが経験上とても苦手なので見ているだけで息苦しさを感じてしまうのです。
自らの正しさを主張する両派の人々はどちらも自分の正義を疑わないのですが、わたしから見れば自らの正しさを過信している時点でどちらも信じるに値しないと思えてならないのです。


例えば子ども向けの番組で正義の味方が戦うのは悪の組織だったりしますが、こんなふうに「正義と悪」という対立軸が明確になるケースって現実では絶対にないと思うのです。誰かがかざした正義に抵抗するのは悪ではなく別の正義であり、この対立は「正義対別の正義」という形を取るしかなくなります。
自分から見たら悪に位置する人々にもそれ相応の正義があるということを忘れてはいけないと思ったし、この作品を見てその思いを新たにしました。


そして妄信といえるほど何かを信じられる人をわたしは理解できませんが、でもうらやましいとも思っています。