「子供の領分」読んだよ

子供の領分 (集英社文庫)

子供の領分 (集英社文庫)

少年と父と二人きりのはずだった旅。しかし、島へ渡る船で父の傍に坐った若い女は…。心の波立ちを描いた「夏の休暇」ほか、少年の眼に映る世界を鮮明な筆致で追う短篇9篇を収録。

http://www.amazon.co.jp/dp/4087520420

読み始めて早々、何だか古臭くて読む気が起きにくい文章だなあという印象を受けたのですが、短編をひとつひとつ読み終えるにしたがって徐々にこれらの作品に共通したテーマが見えてきてものすごく面白くなってきました。
その共通したテーマというのは子どもの成長。日常で起こったささやかな出来事や大きな事件をきっかけにして成長・変化していくさまざまな年齢、さまざまな立場の子どもの姿が描かれていてその多様さが生々しく描かれていると感じました。
成長のきっかけというのは、子どもたち自身の領分内で起こることもあるし、もしくは子どもたちが偶然大人の領分に入ったり覗き見てしまったことをきっかけとして起こることもあります。そんなひとつひとつの出来事が本当に経験したことがあるように感じられるほどリアルなことばかりなのにはとても驚いてしまいました。何でこんなことに共感をおぼえてしまうのだろうと首をかしげたくなってしまいました。


そしてものすごく面白いと感じたのは、いくつかの短編で感じたことなのですがその短編の最初で受けた登場人物の印象とラストで受けた印象の違いというのが夏休みが終わって久しぶりに会った友達を見て「ちょっと会わないうちに何だか変わったな」と感じたときのそれと似ていたということです。
そういった部分がとても夏らしく感じる一冊でした。