マイクロソフト戦記

マイクロソフト戦記―世界標準の作られ方 (新潮新書)

マイクロソフト戦記―世界標準の作られ方 (新潮新書)

炸裂する癇癪、飛び交う怒号、喧嘩腰のビジネス――一九八〇年代後半から九〇年代初頭、IT業界のグローバルスタンダードをめぐって歴史的な戦いがあった。破綻したマイクロソフトアスキーの共同戦線、撤退してゆくPCメーカーとソフトメーカー、次々現われる新規格……幾多の難局を乗りこえ、ウィンドウズは爆発的に普及した。ヨーロッパと日本で最前線にいた著者が、自身の体験とともにその理由を解き明かす。

トム佐藤 『マイクロソフト戦記―世界標準の作られ方―』 | 新潮社

わたしが初めて買ったパソコンはWindows98 Second Editionが搭載された富士通BIBLOという機種でした。
当時大学3年生だった私にとっては結構な大金だった25万円を投じてパソコンを買ったのですが、元々パソコンを使ってやりたいことがあったわけではない私はメールとインターネットくらいしか用途がありませんでした。もったいない...。
改めて振り返って感じるのは、こんなまったくコンピュータに興味がなかった私でもパソコンを買おうかなと思ってしまうくらい、当時のWindowsというのはとても便利で使い勝手が良さそうに見えましたし、実際に使ってみても設定はとにかく簡単だったし、細かいことなんて分からなかったけれどそれなりに使うことが出来る素晴らしい製品でした。


Windowsのおかげで今まで知らなかったインターネットという新しい世界とつながることが出来たわけですし、その今までにない新しい世界にはひどく興奮したのを覚えています。今思うと、この時にコンピュータやインターネットと触れたからこそ就職する時に今のようなシステム開発を仕事として選ぼうと思ったわけですし、そう考えるともしWindowsがなかったらきっと今は違う仕事をしていたことはまず間違いないと思います。


そんなわけでコンピュータ愛用歴の短いわたしから見たら、マイクロソフトというのは最初から大企業であり、パソコン用OSのスタンダードとして君臨していたような、そんなふうに見えていました。サーバ用途のOSとしても手広く手がけている今となっては、もうこの姿以外は全く想像出来ないのですが、そんなマイクロソフトの黎明期を詳細に書き綴ったのが本書なのです。
マイクロソフトについては上記のような姿しか知らないわたしにとっては非常にインパクトが強い話が多くて面白かったです。どんな企業であってもその立ち上げ当初は不安定であるというのは理解していますが、それでもこんなに綱渡りを続けて今に至ったのかと思うと言いようのない不思議な感覚をおぼえます。デファクトになるべくしてなったとは到底言いがたい状況の連続ばかりなのに、今このような状況になっているというのは本当に世の中は何がどう転ぶのか分からないものです。


もちろん現在生き残っているのは相応にすばらしい製品を作っていたからであり、その点はさすがだと言えますが、他のOS(OS/2Mac)ではなくWindowsが選ばれたことは「最大多数の最大幸福」を目指していたためであるというのはとても面白い見解だと感じました。
そう考えると、世の中にWindowsが選ばれたのは、運もあったにしろ偶然ではなく必然だったのかも知れないと思わずにはいられません。


Windowsが好きな人にはお奨めです。マカーな人は多分いい気分にはならないのでお奨めしません。