NHKにようこそ!

NHKにようこそ! (角川文庫)

NHKにようこそ! (角川文庫)

大学中退以来、外出するのはコンビニに行く時だけ。
友人の数はゼロ。
睡眠時間 一日十六時間。
そんな生活が四年目に突入する佐藤達広 22歳。

彼は気づいてしまった。
大学を中退したのも、無職なのも。
六畳一間のアパートから出る事ができないのも。
すべて巨大な悪の組織、N・H・K(日本ひ○こ○り協会)の仕業なのだと!

http://www.kadokawa.co.jp/hikky/index.php?cnts=intro

普段読まない作品に手を出してみようプロジェクト第一弾は「NHKにようこそ!」
著者についてはひきこもり作家ということで名前だけは聞いたことがあったのですが、著書は読んだことがありませんでした。表紙の絵もそうなんですが、印象として何となく苦手な空気を感じたんですね...。
と、著書を読んだことがないと書きましたが、ひとつだけ著者の作品に触れたことがあることに読んでいる途中、気づきました。それは今年1月に観た映画の「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」でして、この原作が彼の著書なのです。何で彼の著書だと気づいたのかというと、作品のテーマがとても似かよっていたからです。この両作品に共通している主人公が探しているものとは「自分が生きる/生きている意味」であり、最終的にそれは「誰かのために命をかけること」に集約されます。通る道は違えどもスタートとゴールは同じなんですよね。そのテーマ一点に対する強烈な熱意というか情熱がどちらの作品からも強く感じられたし、だからこそ10か月前に観たそれほど印象的でもなかった映画のことをこの作品を読んで思い出したのだと言えます。


それとこの本はあとがきがものすごくおもしろくて、本編よりもあとがきの方が好きだと思ってしまうくらいなのですが、ひきこもった実体験を本にすることの大変さ、難しさというのが伝わってきてとても参考になりました。実体験を元にして小説とか書くことは、何もないところから書くよりもすごく書きやすい反面、安易にそうしてしまうことでその後に続かなくなるという彼の実体験は、実感のともなった非常に重い言葉だと感じました。


普段読む本とはかなり傾向が違うので読みやすいとは思いませんでしたが(情景や複数の人物が出てくるところの描写がわかりにくかったかな)、でも勢いのある文章とスピード感あるストーリー展開はおもしろかったです。