言えない秘密


天才的なピアノテクニックを持つ転校生・シャンルン(ジェイ・チョウ)。ある日、彼は音楽室から流れてくる、かつて耳にしたことのない曲に導かれ、少女・シャオユー(グイ・ルンメイ)と出会う。学校を休みがちの彼女のミステリアスな魅力にシャンルンは恋をし、いつしか2人は一緒の時間を過ごすようになっていく。だがシャオユーは、どうしてもシャンルンに言えない秘密を持っていた――。高校の音楽室で運命的に出会った2人に隠された、たった一つの“秘密”をめぐる青春ラブストーリー。アジアで圧倒的な人気を誇るジェイ・チョウの初監督作品。

『言えない秘密』作品情報 | cinemacafe.net

チネチッタ(川崎)にて。
音楽学校を舞台にした甘く切ない青春ラブストーリー...かと思いきや、そんな凡庸な作品ではなく、緻密に描き上げられた「だまし絵」のようにあざやかに予想を裏切ってくれた作品でした。「学生時代にかわいい彼女かー。いいなー。」とほのぼの楽しく観ていた私を、いとも簡単に出し抜いた見事としかいいようのない巧妙な構成には呆然としてしまいました。
おもしろいとかよかったとか、とにかくこの作品を全力で褒めたいのですが、どうも今の気持ちを正しく形容してくれる言葉が見つからなくて困ってしまうほど、とてもすばらしい作品でした。


私がこの作品にとても惹かれたのは、上に書いたとおり、構成がとてもよかったというのもありますが、それよりもシャオユーを演じたグイ・ルンメイの表情に心底魅了されてしまいました。
例えば、シャオユーが大好きなシャンルンを見ているその目は、映画としてその場面を観ている私が見ても一瞬胸が苦しくなるほどとても熱を帯びていて、見ているだけでその気持ちが伝わってくるほど真に迫る印象を受けました。
そしてさらに魅力的だと感じたのは、彼女が考え事をしたり真剣にピアノをひいているときに見せる横顔がとにかくすばらしくて、結末に関わるのであまり詳しくは書けませんが、最初に見とれて次にハッとさせられるような何となく悲しくてどこか神秘的な横顔は今もはっきりと思い出せるほど印象的でした。



この作品についてどうしても言っておきたいことがひとつだけあるのですが、それはこの作品を観ないまま死ななくてよかったということです。映画ごときで大げさだと言われたらたしかにそうかも知れませんですが、でもそれほど観てよかったと思える作品でしたし、一度観た今となっては、もしこの作品を観ないままこれからの人生を過ごしていたかも知れないことを考えるだけでぞっとします。
そもそもこの作品自体まったくのノーマークでして、そもそも観ようと思ったのはチネチッタでその時間に観られる作品がこれだというだけで選んだ以上の意味はなかったのですが、この偶然にはいくら感謝しても足りないほど感謝しています。


公開している/予定している映画館はあまり多くないようですが、近くで見られる方はぜひ観てみてください。


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