「幕が上がる」見たよ


とある地方都市の県立富士ケ丘高校に通う、さおり(百田夏菜子)は、演劇部最後の1年を迎えようとしていた。そんなとき、東京の大学で演劇をやっていたという美人の吉岡先生(黒木華)が、学校にやって来る。さおりは、姫キャラの“ユッコ”(玉井詩織)、黙っていれば可愛い“がるる”(高城れに)、演劇強豪校からの転校生・中西さん(有安杏果)、さおりを慕う後輩の明美ちゃん(佐々木彩夏)と共と、年にたった一度の大会に挑むことに。さおりたちが目指すのは、地区大会突破。だが、新任の先生は「何だ、小っちゃいな、目標。行こうよ、全国」と言う。高校演劇は、負けたらそこで終わり。やがて、男子よりも、勉強よりも、大切な日々が幕を開ける――。

『幕が上がる』作品情報 | cinemacafe.net


主演のももクロメンバーのことは何も知らなかったのですが、おもしろそうな青春映画が!と前から気になっていたので観に行ってきました。ももクロのことを知らなかったことが功を奏したというか、それぞれのメンバーへの思い入れが何もなかったからこそ純粋に映画として物語そのものを楽しむことができました。

かなりよかったです。


本作でとくに目を見張ったのが新任の吉岡先生を演じた黒木華さん。

過去に何作か出演作を見たことはあって切れ長で涼しげな目元が蒼井優と少し似てるなと感じたものの、さほど印象に残る感じではありませんでした。彼女の出演作を調べたら見たことはおぼえている作品の名前がいくつかあるのですが彼女がどういう役で出ていたのかをおぼえていない作品ばかりだったのです。


ところが本作で見せた黒木さんの存在感は群を抜いていて、もう彼女のことがもっと観たくてたまりませんでした。

美術の先生らしい容貌や低くて耳に残る声。
演劇の素人である演劇部のメンバーを強豪校に負けない演劇部に仕上げていく中で、自らもまた舞台に立ちたいと願う彼女の気持ちは痛いほど伝わってきたし、生徒たちに向けるまなざしがまさに先生がかわいい生徒たちに向けるそれとしか思えないほど真に迫っていたからこそ、「生徒たちのことを思う気持ち」と「自らの気持ちにも素直になりたいという気持ち」の間に立って葛藤したんじゃないかなとわたしは想像せずにはいられなかったのです。作中では明確に描かれていないけれど、そうとしかもう思えないのです。


あとは演劇部のメンバーの青春っぷりもなかなかよくて、10代のころにやりたいことを見つけてそれに全力で打ち込めることがどれだけ幸せなのかを改めて思い知らされました。10代というのは何をしなくても内側からエネルギーがわきあがってきてそのやり場に困る時期だけど、そのやり場を適切に見つけられた人たちはこんなにも楽しく過ごせるのかとうらやましくてしょうがなかったです。

わたしも高校生のときにこんなふうにやりたいこと、打ち込みたいことがあればよかったのになと心底思いました。


この作品を観終わってからももクロのことを調べたりそもそも誰がももクロのメンバーだったのかを確認したのですが、パフォーマンスや個々のキャラクターがとても魅力的で多くの人が惹きつけられるのも分かるなと思ったのですが、一方では映画を観る前にメンバーそれぞれを知っていたらきっと映画をここまで楽しむことはできなかっただろうなとも思いました。

わたしにとっては見知らぬ女の子たちが演劇にのめりこんでいく過程そしてそこでぶつかった壁に悩んでもがく姿に感銘をおぼえたし、そこにいる人たちが知らない誰かだからこそ、自らが同年代であった当時のことと重なり合う何かを感じることで

ところが、仮にこの作品を観る前にももクロのことを知っていてさらに彼女たちの活躍に心惹かれていたとするならば、おそらくそんなふうに普遍的な物語としては見ることが出来なかっただろうなと思うのです。スクリーンの中にいる女の子が市井の誰かだと認識しているからこそ彼女たちをとおしてその物語に何かしらの想いを投影できるわけで、演じる彼女たちが自分が憧れる人たちになってしまえばもはやそれは彼女たちの物語とてしか見えなくなるのです。


ということを、映画を観終えてから改めて予告を見直したときに感じました。

そう考えると、ファンとファンじゃない人の評価って大きく分かれるのかも。


@TOHOシネマズ宇都宮で鑑賞


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