「贖罪」読んだよ

贖罪 (双葉文庫)

贖罪 (双葉文庫)

取り柄と言えるのはきれいな空気、夕方六時には「グリーンスリーブス」のメロディ。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺害事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせることになる―これで約束は、果たせたことになるのでしょうか?衝撃のベストセラー『告白』の著者が、悲劇の連鎖の中で「罪」と「贖罪」の意味を問う、迫真の連作ミステリ。本屋大賞受賞後第一作。

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趣味も後味も悪いとしか言いようのない作品でしたが、湊さんお得意の独白形式で紡がられる物語は相変わらず読みやすい上におもしろくて、あっという間に読み終えてしまいました。

この作品のような「独白で語られる物語」が読みやすく感じられるのは、主観だけで語られるために余分な情報がないからかなと思ったのですが、ただ、独り言って基本的には自分自身に向けて発せられるモノなので、「語られている場面が想像しやすい独白」というのは実はむずかしいんじゃないかなと読みながら感じました。


物語を独白だけで組み立てるのがむずかしいからこそ、その部分のうまさが湊さんらしさとして強みになるんだなといまさら思い付きました。


本作は「娘を殺された女性が、娘が殺された近くに居合わせたのに助けてくれなかった4人の少女たちに贖罪をもとめたらその子たちの人生がたいへんなことになりまして」というお話ですが、4人の少女と彼女たちに贖罪を求めた女性の計5名の独白が5章に分けて綴られています。


本作で一番好きだったのは、学校の先生になった真紀のお話。


新聞や週刊誌、あとはテレビのワイドショーがたれながすあやふやな情報、それは「そうであったらおもしろそう」という程度の根拠のない話だったりするわけですが、そういったものにおどらされる「世間」というものの愚かさや無神経さへの怒りがすごく感じられたし、さらに独白しているのが学校の先生というつながりもあって、どことなく「告白」をほうふつとさせる内容でした。


ただ、いくらか読めていたとは言え、あのオチはちょっと勘弁して欲しかったです...。