「夏が僕を抱く」読んだよ

夏が僕を抱く (祥伝社文庫)

夏が僕を抱く (祥伝社文庫)

ゆっくりと遠ざかり始める、夏休みの記憶と、君。淡くせつない、おさななじみとの恋を描く最新短編集。

http://www.amazon.co.jp/dp/439663319X

幼なじみというのは幼い頃の友だちを指す言葉なのですが、同性・異性どちらにも適用できる言葉であるにも関わらず、なんとなく異性の友だちを指すことが多いような気がします。いやいやそんなことは無いよと言われるかも知れませんが、マンガや小説のようなフィクションの世界では異性関係のひとつの理想形として幼なじみというのがあると思うのです。


幼い頃から家族ぐるみで付き合っているような関係と言われて想像するのは、「いっしょにお風呂に入った」とか「泊りがけでいっしょにでかけた」とか「毎日いっしょに遊んでた」といったものすごい濃度の関係です。しかも物心が付くか付かないかのときに築く関係だからこそ特別なのであって、ある程度成長してからそんな関係を築こうと思っても無理なんですよね。

だからこそ幼なじみという関係は特別であり、そうじゃない人からみたらものすごいアドバンテージがあるように見えるのです。

もちろんわたしは幼なじみがいないので実際のところはどうなのか分かんないですし、結局はケースバイケースなんでしょうけど。


本作はそんな幼なじみとの微妙な関係を描いた短編集でして、これがとてもおもしろかったです。

幼い頃を共にしているが故に、相手の行動パターンや考えていることが何となく分かるとか、しばらく離れていても会うとパッと通じ合う。そんなうらやましい男女関係にほのぼのとさせられつつ、でも年を重ねていく中で徐々にすれちがっていく寂しさみたいなものにくよくよさせられちゃいました。


こんなふうに感情があちこちに引っ張られる感覚がすごくむずがゆくて、でもすごく気持ちよかったです。


ちなみに著者の豊島さんも幼なじみがいたわけではないそうですが、だからこそ幼なじみへのあこがれがあってそれがグッと作品に詰め込まれているんだろうなあと感じました。なんかわたしが昔してた妄想とよく似た話もあって、すごい読んでてにやにやしちゃいました。