「ミッドナイト・イン・パリ」見たよ


ハリウッドで売れっ子の脚本家ギル(オーウェン・ウィルソン)は、婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)とその両親と共に憧れのパリに意気揚々とやって来た。しかし、1920年代、文化・芸術が花咲く時代のパリへ突然タイムスリップしてしまう。真夜中のパリで出会ったのは、ガートルード・スタインキャシー・ベイツ)のサロンに集うヘミングウェイフィッツジェラルドピカソたち。ロマンティックでマジカルな夜が始まろうとしていた――。

『ミッドナイト・イン・パリ』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮で観てきました。


我々の身の回りにある物質を分解していくと、すべてが原子という小さな物体で構成されています*1。さらに、この原子は原子核と呼ばれる部分とその周りを飛び回る電子で構成されているのですが、この原子核と呼ばれる部分は同じ状態を維持し続けることが難しい、言い換えれば常に不安定な状態にあるために、いつも「より安定した状態」になろうとその状態を変え続けています。


この原子核の性質と同じように、世の中の多くの物事は「不安定な状態にあるものはより安定した状態を求める」という性質をもっています。そしてそれは人間の考えや行動にも当てはまるものでして、たとえば未来という不安定なものからあえて目をそらし、もう変わることのない過去に思いを馳せるなんてのはその最たる例ではないかと思います。

10代の頃はよかったとか、若い頃はよかったと口にする人が少なくないのは、もう変わることのなく確実にいまにつながっている過去というのは現在に比べると魅力的に見えてしかりだと思うわけですよ。


のっけから話が映画とはかけ離れてしまいましたが、本作は「夜のパリを酔っぱらって歩いていたら憧れていた時代にたどり着いてしまい、挙句尊敬していた偉人たちと会ってしまってあら大変」というお話であり、常に過去は輝いて見えるものだという戒めが耳に痛い作品でした。

びっくりするくらい、自然に現代と過去を行き来するというとても不思議な物語ですが、パリという場所のもつ力ゆえか、なぜかその非日常感が違和感にならない力がこの作品にははたらいていて、物語が物語としてしっかり機能していたと感じました。


生きるということはこれから何が起こるか分からない中をさまようことですし、自分がこれからどうなるのかさえわからない不安な中で生きていくのはとてもしんどいですが、でも自分が生まれたこの時代を生きていくんだというギルの決心というか覚悟が伝わってくるラストはとてもよかったです。


唯一、そもそもギルとイネズはどこに惹かれあっていたのかというところは最後までまったく見えてこなかったのが気になってしょうがありません。



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*1:実際はさらに素粒子に細かく分割することも出来るのですがここでは割愛