「ノルウェイの森」見たよ


高校時代の唯一の親友キズキを突然の自殺で喪ったワタナベ(松山ケンイチ)は、新しい生活を求め東京の大学に行く。そこでキズキの恋人だった直子(菊地凛子)と偶然再会。同じ悲しみを背負った二人は、大切なものを喪った者同士付き合いを深めていく。しかし付き合いを深めるほど、次第に直子の持つ喪失感は深くなり、20歳になった直子は京都の療養所に入院することに。そんな時にワタナベは大学で、春を迎えて世界に飛び出したばかりの小動物のように瑞々しい女の子・緑(水原希子)と出会う――。1987年に発表され、国内での累計発行部数870万部を誇る村上春樹の同名小説の映画化。『夏至』のトラン・アン・ユン監督がメガホンを取る。

『ノルウェイの森』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮にて。


原作未読で観てきましたが、全体的に言葉足らずな印象を残す作品でした。
時代の空気をうまく切り取ってみせたところや静止画としてみたときの各場面場面の美しさ、あとは文語体なせいかどこかよそよそしさを感じさせるセリフなどなど、ユニークで印象に残るところもたくさんありましたが、すべての出来事がどこか唐突で文脈から汲み取るのもなかなか難しいとわたしは感じました。
原作未読なのであくまで想像なのですが、この映画は原作の中からこれはというエピソードを選りすぐり、それを映画として再構築したんじゃないかと思います。だとすれば、まずは基礎となった原作を読んでおいて全体像を頭に入れてから観るべき作品だったんじゃないかなと感じました。


というわけで、正直そんなあいまいな理解でこの作品に対する感想を書いてよいのかどうか迷うのですが、とりあえず観て感じたことをつらつらとまとめます。


過去を振り返った時にそこを切り取る切り口というのは人それぞれ違います。
たとえば映画ばかり見ていた人は当時好きだった作品を交えて当時を振り返るでしょうし、アルバイトばかりしていた人は「バーで働いてたときは楽しかったなあ」なんてことを思うかも知れません。
こんなふうに具体的な事例や切り口は個々人ごとに違いますが、そうではなくて年代ごとにある程度共通した特定の切り口というものもあります。これは同じくらいの年齢の人が集まった時に一番話題になるものがそれに該当するものでして、10代から20代だと恋愛、20代から30代だと結婚や育児、仕事、そして40代から50代以降だとこれに加えて病気というのが挙げられます。
これは多くの人がとおる道なので、個々の事例としてではなく一般化してとらえれば共通の話題になるテーマなのです。


そういった視点で考えると、セックスという切り口で10代から20代の人間の生き方を切り取って描くというのはとてもうまいなと思います。多くの人が興味がもてて自身の過去を投影しやすく(投影が難しければ比較)、そしてそこに何かしら意味を見つけ出したりしやすいんですよね。


というわけで切り口がうまいというのはわかるのですが、個人的にはあまりこういう話自体がビビッとこなかったわけで、水原希子かわいいなーということくらいしか言いたいことはありません。演技がいまいちなところも個性的なキャラクターという役柄にフォローされてとてもよかったんじゃないかなと。


原作好きな人には物足りんじゃないかと思うし、原作を知らない人には別の意味で物足りないだろうし、全体的に中途半端な印象を残す作品でした。絵的な部分や演出も含め、嫌いじゃないけど何となく釈然としない作品。


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