- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/07/15
- メディア: 文庫
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完全密室、時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。フーダニットからハウダニットまで、12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた、恐るべき「ミステリ界の謎」とは?
http://www.amazon.co.jp/dp/4062646188
本格推理の様々な“お約束”を破った、業界騒然・話題満載の痛快傑作ミステリ。
映画を観るようになってわかったことがひとつあります。
それは映像が独特な作品というのはよくあるけれど、構成が個性的な作品というのはほとんどないということです。
当然ストーリーのディテールについてはそれぞれの作品でいろいろと異なりますし、当然「どの作品も結局は一緒だよ」なんてことが言いたいわけではなくて、作品の流れにはテンプレートがあるということです。起承転結という言葉もありますが、人が楽しめる、受け入れやすい話というのは意識/無意識問わずそのテンプレートに則って描かれているのです。このテンプレートという呪縛は意外性のある作品と呼ばれるものであっても逃れられるものではなく、ラストにどんでん返しで驚かせるという流れを踏襲しているに過ぎないのです。
だから「映画を観たり本を読んだりすることに意味がないよ」なんて話がしたいわけではもちろんなくて、ではそのテンプレートをはずした作品というのはどういう作品になるのだろうと考えたことが以前にも何度かあって、そういった売り文句の本を読んでみたいと思ったりしたのですが何となく手にしないまま今に至ってしまいました。
そして先日この「名探偵の掟」を本屋で見かけたときにこれはぜひ読んでみたいと思い、手にしてみました。まったく知らなかったのですが最近ドラマ化されていたようで、そのおかげで売り場の1コーナーを独占してとても目立っていました。
本作はミステリーの登場人物たちがストーリーを俯瞰しながら話を進めるというとてもユニークな作品です。
ミステリーでよく出てくるお決まりな展開やトリックに対して一言ぼやきながら進むというのはたしかに今までに読んだことのない視点であり、構成でしてその点についてはものすごく感心させられました。
ただ、ものすごくおもしろくて読みやすい反面、5話目あたりからダレてしまい何となく読む気がうせてしまったのです。謎を謎として解明していくのではなく、ミステリーの枠組みの定石から読み解いていくという流れ、そして時にそれはミステリーというジャンルのお決まりの多さをあざ笑うかのようにも感じられてあまり気持ちよく読めなくなってしまったのです。
こういうメタな視点というのはたしかにおもしろいけれど、でもミステリーというジャンルを飽きるほど読みつくした人が独りでブツブツとつぶやいているのを聞いているような感覚に近いと感じたし、一旦そう感じ始めると今度はとたんにうっとうしさにかわり楽しくなくなったというのが正確な表現かも知れません。
わがままな言い方かも知れませんが、楽しめる作品というのは則るべき手続きを満たしている、つまりはそれなりにテンプレートになるような構成で描かれていることにいまさらながら気付かされました。
話が突然変わってしまうのですが、わたしが高校生の頃に週刊チャンピオンで「鉄鍋のジャン!」という漫画があってわたしはこれが大好きで毎週読んでいました。バキとこれだけのためにチャンピオンを買ってたくらい好きでした。
- 作者: 西条真二
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2007/01
- メディア: コミック
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このマンガで何だか忘れたのですがお店のメニューに載せる春巻きを作るという対決があったのですが、その時に主人公のジャンはものすごく熱い汁の入ったものを作って食べた人を驚かせるということをしたのです。当然試食をしたみんなは食べた時にびっくりするのだけれど、でもこの意外性と味のすばらしさはすごくいいという評価を得たのです。それに対してライバルの立場にいたキリコはものすごく普通の春巻きを出します。それは一見普通の春巻きでジャンはバカにするのですが、それがものすごく高評価を得るのです。
なぜか。
それはお店のメニュー、しかも春巻きというスタンダードな商品には毎日食べても飽きないような味が求められるからという理由でして、その理由やキリコがその意図に気付いて新たなスタンダードになりうるものを作ろうと取り組んでいたことがとても印象的でした。意外性だけで一時的にウケルものを作ることも大変だけど、それ以上にあたらしいスタンダードとなるようなものを作るということはどれだけ大変なのかということがとても伝わってきてこの時の話はものすごくよく覚えています。
テンプレートに則らずに新しい境地を拓くというのも同じ話で、新しいものはそれだけでそれなりに話題になることがあるかも知れないけれど、それが新たなテンプレートになれる可能性というのは確率的にはとても低いし、だからこそ世の多くの物語というのはジャンルというテンプレートに則って描かれるのだとこの本を読んで再認識させられました。
とてもおもしろいのですが最初の2章くらいで十分だというのが率直な感想です。
最後の話はそれはそれでおもしろいのですが、そこまで読んだ時点ですでに食傷気味でした。
[追記]
鉄鍋のジャン!はここ数年またチャンピョンに掲載されていたようです。そう言われてみると何となく見たような記憶も....。
新しい話も読めるとなると久しぶりに単行本集めてみようかななんて思ってしまいます。