平面いぬ。

平面いぬ。 (集英社文庫)

平面いぬ。 (集英社文庫)

夏に読みたくなる本をあたまの中で数え上げるとその上位作品にはかならず乙一さんの作品が入ります。
乙一作品のみりょくは、現実と虚構の境目に位置するような、それは一見しただけでは現実とは区別ができないくらいに似かよった、世界を作り上げてその世界で物語を展開させていくというところに独特のおもしろさにあると感じています。
例えば夏のむし暑い夜。薄暗い灯りだけをつけて寝床で読んでいると自分がその世界に迷い込んでしまったようなそんな錯覚をおぼえるのです。まさに夏に読みたい本の代名詞です。


さて。本書もその例にもれず、ちょっとだけ現実世界とはずれた世界を舞台にした物語が収録されていて全部で4篇の短編で構成されています。いずれも着眼点がおもしろいのですが、その中でも特に「石ノ目」は気に入りました。その目を見たものすべてを石にしてしまうという石ノ目と同居することになった2人の男性の物語なのですが、石ノ目と過ごすという非日常的な部分と大きなハプニングもなく日々が過ぎていく日常性が混ざり合うさまが気持ち悪くてよかったです。結末の意外性も楽しくてとてもおすすめです。