卵の緒

卵の緒 (新潮文庫)

卵の緒 (新潮文庫)

家族の形。きっと瀬尾さんの書きたいテーマはそれなんだろうなと改めて感じる作品でした。


瀬尾さんが描く作品はいつも家族が壊れることから始まります。

    • 父親を止めると宣言するシーンから始まる「幸福の食卓」
    • 自分はこの家の子どもではないという悩みから始まる「卵の緒」
    • 父親の隠し子との同居から始まる「7's Blood」


どれも家族の形に悩み、傷つく子どもの視点で描かれています。
家族って何だろうという問いが掲げられ、それに対しておのおのが答えを見つけていくという流れはどの作品も同じなのに、そのアプローチのしかたの違いが作品の印象を大きく異なるものにしています。その多様な印象は、家族の形もまた多くあることの隠喩であるように感じます。


「卵の緒」という一冊の本を読み終えた時、せんじつから考えていた家族とはなんだろう?という疑問への答えが見えてきた気がします。
それはその共同体を構成する人が家族だと思うかどうか。それだけだと思います。
血縁者でなくても、今は一緒に住んでいなくても、互いが互いを家族だと思っていればもう家族なのだと思うのです。一緒に住んでいるとか、血縁だからとか、とにかく理由なんて何でもいいからそう思えればもう家族なのです。形にこだわることなんてないというのがこの本から導き出された私なりの答えでした。


家族や未来に対して前向きになれる一冊でした。ひじょうに面白かったです。