牛丼一杯の儲けは9円―「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学 (幻冬舎新書)
- 作者: 坂口孝則
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/01/01
- メディア: 新書
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売れば売るほどもうかるわけではないという、当たり前のことだけど忘れがちなことを懇々と説いてくれる一冊。
タイトルにある牛丼一杯当たりの利益が10円程度というのは、想像以上に低い金額でしてその意外性にとても驚きました。元々単価が高くないモノなので単品では大した利益ではないだろうというのは予想していましたが、その予測に根拠がまったくなかったということと、そもそもの見積もりが甘かったのだと思い知らされました。
さらに読み進めてみて面白かったのは、ブランド物のバッグや車など比較的値の張るものであってもその利益率はほとんど変わらないという点です。つまり売り上げに対する利益はそれほど変わらないというのは
そんな面白い話題の中でもとりわけ興味を惹いたのが家電量販店の話題。
ここに30万円の大型テレビを販売している家電量販店があったとしましょう。もちろんテレビの製造元によっても異なりますが、家電量販店は販売価格の7〜8割で卸問屋から仕入れてきます。
(中略)
ヤマダ電機の2007年3月期決算の営業利益率は3.67%でした。
これに30万円を掛け合わせると、1万1019円です。コジマは、マイナス1.11%でした。これは、30万円のテレビを売るたびに、約3333円ずつ損をすることになります。
ビックカメラは2007年8月期が2.98%で、約8931円です。
営業利益を見ただけでコジマは既に赤字になるはずですが、実は最終的にはこれが黒字に変わっています。
その種が「販促協賛金」です。
二つめは、仕入先から値引き以外の便宜供与を受けることです。
例えば、仕入先からヘルパーと呼ばれる販売援助員たちを大量に連れてきます。
(中略)
そして、これがより重要なことなのですが、仕入先から「販促協賛金」というものをもらいます。早い話が、仕入先からのリベートです。商品を値引きしてしまうと、仕入れ先としてもむやみやたらに市場価格を押し下げることになるので、買い手企業に別途支払います。
売ってもらう見返りを仕入先からもらい、それを値引きされた分の補填に使っているのです。その見返りが販促協賛金という仕組みです。そういえば、以前携帯電話の販売で同じような仕組みが使われているというのを聞いた事があります。
売ってもらうためにお金を払うというのは賄賂というかよくないイメージを持ってしまいますが、それが業界の慣例だと言われるとそういうものかと思ってしまいますし、何よりそのおかげで安く買えているのだと思うと何となく文句を言う気がなくなってしまいます。
で、この販促協賛金ですが、どのくらいの金額なのかというのも説明されています。
家電量販店を営む企業の決算書を見ると、営業利益(本業の儲けを示す指標)は赤字かあるいは相当低いにもかかわらず、経常利益(営業外収益を含む企業の採算性を示す指標)は黒字に転換しています。これは、この「販促協賛金」が効いているわけです。
例えば、コジマは2007年3月期決算では、営業利益が55億円のマイナスだったにもかかわらず、110億円ほどの販促協賛金があり、結果としては43億円のプラスに転じています。
- 1.1%が55億円ですから、売り上げは5,000億円程度あることになります。すると仕入れは5,100億円弱。全仕入額の2%程度は販促協賛金が付く計算になります。110億円という金額はたしかに大きいですが、割合で計算すると案外大したことがないのかも知れません。
散々、本題から外れてしまいましたが、このようにして各企業が利益を出すためにさまざまな工夫をしているのだという紹介があり、その手法はとても参考になりました。
特に「仕入れ」をいかに工夫して利益を出すのかという部分について本書はかなり力を入れて説明しており、非常に読み応えがありました。